陽が傾き始めるころ、清水家の居間には、義母の芳美が淹れたほうじ茶の香りが漂っていた。美智佳は湯のみを両手で包みながら、向かいに座る芳美の話に耳を傾けていた。

「そういえば、国道沿いのスーパー、改装してからずいぶん評判がよくなったのよ。オーナーが変わったみたい」

「へえ、きれいになったのは知ってましたけど、そうなんですか。今度行ってみようかな」

「次来たとき、美智佳ちゃんも一緒に行きましょうよ。安い日もちゃんと覚えてるから」

「さすがお義母さん、頼もしいです」

冗談めかしてそう言うと、芳美は得意げに笑った。

良好だった嫁姑の関係

嫁姑といっても、世間でささやかれているような険悪な雰囲気はない。芳美の歯に衣着せぬ物言いと、あっけらかんとした性格によるものだろう。

夕食後、美智佳と芳美が台所で片づけをしていると、義父の尚之が居間から顔を出した。

「いつも悪いね」

「いえ、ごちそうになったんですから、これくらいはさせてください」

「悪いと思ってるなら、少しは手伝えばいいのにねえ」

芳美がそう言うと、尚之は素早く自分の湯呑みを台所に運び、逃げるように部屋を出ていった。居間に取り残された夫の貴弘も、慌てて芳美が用意してくれた惣菜や菓子の入った袋を持ち上げる。

「俺、これ先に車に積んでくるよ。美智佳も帰る準備しといて」

「わかった」

2人の反応に美智佳と芳美は顔を見合わせて笑った。