久々の家族サービス
海に行こうと決めたとき、伸也は絵梨香にも確認していた。絵梨香は行きたいと答えてくれたが、峻也のように飛び跳ねて喜ぶわけではなかった絵梨香が本当に楽しみにしているのかどうかは分からなかった。
伸也は絵梨香の横顔を見ながら困ったように笑った。本当は海に来たかったのではなく、こちらに気を遣って行きたいと言ってくれただけなのかもしれないと胸の奥に小さな不安があった。
砂浜についてすぐのところに建っていた海の家から香ばしい焼きそばの匂いが漂ってきた。店先ではかき氷やフランクフルトも売られていて、遊びに来た家族連れが何組も並んでいる。少し空腹を刺激されたが、まだ昼を食べるには早い時間だった。そのまま通り過ぎようとしたとき、真希が伸也を呼び止めた。
「ねえ、ここでパラソルをレンタルできるらしいよ」
真希は張り紙を指さしていた。
「ああ、そうなんだ」
「日焼けしたくないから借りようよ」
パラソルを借りた後、伸也たちは砂浜に出て持って来たレジャーシートの上にクーラーボックスを置いた。伸也たちは家から下に水着を着てきたのでその場で服を脱ぎ、水着姿になった。
「それじゃ私はここで荷物番をしてるから」
真希はそう言ってレジャーシートに座った。
「泳がなくていいのか?」
「うん。日焼け嫌だし」
「そうか。それじゃ頼んだ」
そう告げて、伸也は峻也と絵梨香といっしょに陽を受けてきらめく海へ向かった。
