幸せなはずなのに募る不安

夕食後になつみはリビングのソファに座って結婚式場を調べていた。スマホの画面には白を基調としたチャペルの写真が映し出されている。

「ねえ、ここどう?」

「おお、いいじゃん。こういう落ち着いた雰囲気がいいよね」

慎吾はそう言うと歯を見せて笑っていた。

この式場で2人並んでる姿を想像するだけでなつみも笑顔がこぼれた。入籍は一緒に暮らすことになったときに済ませていたが、式はまだ挙げていない。2人で話し合いをして「来年の春ごろに挙げよう」とだけ決めていた。

今は6月なので、式まではあと10カ月ほどある。とはいえ招待客のリスト作りや衣装選び、料理や写真のプラン、新婚旅行の準備など、やるべきことは多い。だからこそ、まず早めに式場だけでも押さえておきたいとなつみは思っていた。

式場決めと同時並行で式の費用の貯金も進めていた。派手な式を挙げたいという気持ちはないが、家族だけではなく、お世話になった人や友達などを呼びたいので、最低でも60人ほどは招待することになるだろう。もちろん新婚旅行にだって行きたい。

だからこそ、何を考えても先立つものはお金だった。

しかし、貯金は順調とは言えない。

目標額まではあと100万ほどだ。家賃などを折半することにより、1人暮らしのときよりも生活費は減っている。もちろんそれ以外にもあれこれと節約しているので、極限まで切り詰めれば1カ月で10万を貯金することは不可能ではない。

ただ、問題があった。

なつみはちらりと慎吾を見る。慎吾はニコニコとした表情でバイク関連のサイトを見ていた。慎吾はもともとバイクが趣味で、休日になると仲間とツーリングに出かけることが多かった。

ツーリングという趣味自体は悪いものではない。ただ出費が多かった。

ローン、保険、ガソリン代やバイクのパーツ代など、とにかくお金が出ていくのだ。

先月も慎吾はヘルメットを新調して5万も使っていた。もちろんそのときにも貯金の話をしたのだが、慎吾は軽くごめんと言うだけだった。

式で出す料理のランクを1つ上げるだけでも60人招待すれば6万円増える。写真のプランを追加すれば、それだけで8万円多く支払わないといけない。だからこそ簡単に5万なんて額を使ってほしくなかった。なつみは慎吾の金遣いに対してモヤモヤとした気持ちを抱いていた。

しかし慎吾はそんななつみの気持ちも分からず、また新しいパーツをスマホで探し続けている。

「この式場、今度フェアをやるみたい。試食もできるし見学がてら行ってみようよ」

「おお、そうだね。行こうよ」

声は明るいが、慎吾の目線は自分のスマホに向けられたままだ。

「じゃあ、予定に入れるけどいいね?」

「もちろん。楽しみだね」

慎吾の言葉が軽いように感じたが、なつみはもやもやを見なかったことにして自分の予定に式場見学と書き込んだ。