慎吾の意外な行動

残業を終えて帰っている間、なつみは慎吾とどう向き合えばいいのかを考えていた。

自分の不満を伝えるだけではまた同じ事を繰り返してしまう。慎吾がどう考えていたのかも聞きたいし、自分が何に不安を感じていたのかも落ち着いて話したい。責め合うのではなく、これからどうしていくのかを2人で考えられたらいい。

なつみはそう思いながら、マンションへ向かった。

 

玄関のドアを開けるとカレーの匂いがしてきた。慎吾は営業先から直帰すると知っていたが、自分よりも早く帰ってきていたようだ。リビングに入るとキッチンで鍋を見ていた慎吾がこちらに目を向けた。

「おかえり」

「うん、ただいま」

それだけ言うとなつみは部屋に戻って着替え、久しぶりに2人で食事をした。

なつみは洗い物をしようと立ち上がると慎吾が声をかけてきた。

「なつみ、ちょっと話をしない?」

「う、うん。何?」

「この間は本当にごめん」

慎吾に頭を下げられてなつみは戸惑った。すると慎吾はタブレットを持ってきて画面をなつみに見せた。そこには落ち着いた雰囲気のチャペルがある式場のページが開かれていた。

「実は俺なりにもいいところがないか探してたんだ。候補をいくつかブックマークしてある。ここは来週フェアをやってるみたいだから、もしなつみが気になるならこの前の埋め合わせも兼ねて、一緒に行ってみない?」

「慎吾が探したの……?」

慎吾は真面目な顔でうなずいた。

「うん。式を挙げなくてもいいってなつみに言われたとき、ちょっとだけ図星だったんだ。なつみと結婚して一緒に住めて、それで満足しちゃってたところもあったんだ」

慎吾はそこで言葉を切り、申し訳なさそうに目を伏せた。

「それで俺さ、先輩に今後はなつみとの約束を優先しますって話したんだ」

「え……? そんなことまでしたの?」

「しばらくはツーリングにも一緒に行けませんって話したんだ。そしたら最初から奥さんとの約束を優先しろって怒られてさ」

慎吾の言葉になつみは目を丸くした。