先輩からのアドバイス
そんな暗い気持ちで過ごしていたある日の昼休みに休憩スペースでおにぎりを食べていると先輩の真由に声をかけられた。
「最近、なんか元気ないね。どうしたの? マリッジブルーってやつ?」
真由には入社当初から目をかけてもらっていて、慎吾と付き合うときもいろいろと相談にのってもらっていた。
なつみは少し迷った末に結婚の先輩でもある真由に思いの丈をぶちまけた。貯金が思うように進まないことや、慎吾が結婚式を挙げることに対して協力的でないことなどを話した。
「正直、このまま一緒にいていいのかどうかも分からなくなってて……」
「まあそうなるよね。式場見学よりも他の予定を優先されたら怒るのは当然。私だってそうしてるわ」
「ですよね……」
真由が賛同してくれただけでも少し救われたような気持ちになった。
「まあでも、うちの旦那もそんな感じだったからねえ。男ってそんなもんよってしか言えないのよね」
「……先輩もそうだったんですか?」
「貯金うんぬんは違うけど、式の準備に関してはあんまり協力的じゃなかったよ。でも別に式を挙げたくないとかそんなんじゃなくて、先を見据えて行動できてないって感じかな。実際に式が近づいてきたらいろいろと協力してくれるようになったし。だから多分、慎吾くんもそのときが来たら、ちゃんとやってくれると思うよ。なつみちゃんと結婚できることが嬉しいって同僚にのろけてたくらいだからね」
「……そうなんですか?」
真由はおかしそうに笑ってうなずいた。
「気持ちはちゃんとあるのよ。でも先を見通せてないってだけだと思う。そういう部分を受け入れられるかどうかだと思うよ。そんな人は嫌だと言うのなら別れたほうがいいと思う。でもそれくらいならなつみちゃんがしっかりと操縦してあげれば気にならなくなると思うけどねえ。そこはちょっと先輩として導いてあげればさ」
なつみは目線を落とした。
「……私しだいでどうとでもなるってことですか」
「そうそう。まあまずはちゃんと話をしてみたらいいんじゃない? どうして式場見学を早くしないといけないのかとか、ちゃんと説明をしたら分かってくれるかもしれないよ?」
真由の話を聞き、なつみはうなずいた。
喧嘩の原因は慎吾にあると思ってるし、不満は今もある。
ただ自分も一方的に怒りをぶつけるばかりで、慎吾がどう考えていたのかを聞こうとしていなかった。結婚式を軽く見ていると決めつける前にどうしてそう思ったのか、何が不安だったのかをきちんと伝えるべきだったのかもしれない。
「……とりあえず今日、帰ったら慎吾と話をしてみますね」
「それがいいよ」
真由はそう言って休憩スペースから立ち去っていった。なつみは真由と話をしたことで少しだけ気持ちが軽くなったような気がした。
