和司が知らなかった娘の今

オフィスに戻った和司は必要な荷物をまとめて会社を出た。処分ではないと言われたが、和司は追い出されたような気持ちだった。

自宅に戻ると広美が驚いた顔で玄関にやってきた。

「どうしたの? 何かあったの?」

和司は靴を脱ぎながら事情を簡単に説明した。話を聞き終えた広美は軽くうなずいた。

「そう。まあ、でもあなたらしいわね」

「何だよ? 俺が悪いのかよ?」

「良い悪いじゃないわ。ただあなたらしいなって思ったから言ったのよ。あなたは仕事一筋だもんね」

そう言うと広美はリビングに戻っていった。

スーツの上着だけを脱いだ和司はワイシャツのままノートパソコンを持って、リビングで仕事を始めた。資料を整理しようと思ったが、心が落ち着かず集中できなかった。普段この時間に家にいることがほとんどなかったからだ。

夕方になって里奈が帰ってきた。里奈はリビングに和司がいることに驚いていた。

「え? 私より先にお父さんが帰ってたの?」

「今日は家で仕事をしてたんだ」

和司がそう伝えると、里奈は軽くうなずいて自分の部屋に戻っていった。しばらくして晩ご飯ができたので3人で食卓を囲んだ。

「里奈、来週は遠征なんでしょ? ちゃんと準備をしないとダメよ」

「わかってるよ。遠征って言ったって別に日帰りだから、たいした荷物とか要らないから」

里奈は面倒くさそうに返事をしながらハンバーグを食べていた。

「今はあなたがチームの中心なんでしょ? だったらしっかりしないとね」

和司はハンバーグを箸で切っている手を止めた。里奈がチームの中心になっているというのを知らなかった。あれだけ部活に行くのも嫌がっていた里奈がいつの間にかチームの中心にまで成長をしていた。和司はそうなる経緯も過程も何も知らなかった。