初節句騒動の終着点

「そもそもあんな尖ってる危険なものを持って来たそっちの責任でしょ……⁉」

「……は? な、何を言ってるのよ?」

「見れば分かるでしょう……!あの兜が崩れて璃空の顔に当たったんです!だから私は危ないと言ったんですよ……!」

真理子は転がっている兜を見て状況を悟った。しかしそれでも反論をしてきた。

「それはあなただって同じでしょ? あなただって兜飾りをしてたじゃない⁉ どうして私が悪いってなるのよ⁉」

「私はこうなる可能性を考えて、丸くて軽い兜を飾っていたんですよ……! それなのにあなたは立派だからという理由で危険な兜を飾って……!」

楓の説明を聞き、真理子は非が自分にあることを感じたようだった。

「お義母さんが璃空のためにいろいろやりたくなる気持ちは分かります。でも私たちだって璃空のために子育てについて学んでやってるんです。リビングが殺風景なのは、ものを置いて璃空が怪我するのを予防するためです。離乳食の味付けが薄いのは、子どもの舌はとても繊細と教わったからです。塩気が強いと腎臓に負担がかかるからです」

楓が胸の内を全て吐き出したところで裕太が声をかけてきた。

「楓、病院と連絡がついたから今すぐ向かおう」

裕太の言葉にうなずき、楓は璃空を抱えてリビングを出て行った。その間、真理子はこちらに一言も言葉をかけようとはしてこなかった。

 

診断の結果、傷口は浅く跡も残ることはなかった。病院から帰るころには璃空も落ち着いていて、家に戻ると裕太が差し出したおもちゃに手を伸ばして楽しそうに遊んでいた。その様子を見て楓はようやく胸をなで下ろした。

リビングに戻ると真理子が持って来た兜飾りはすでに箱にしまわれていた。ソファに座っていた真理子は反省した様子で楓に歩み寄り頭を下げてきた。

「……いろいろとごめんなさいね。私なりに力になろうとしたんだけど……」

「怪我も大したことはなかったですから。ただこれからは私たちのことを温かく見守ってほしいと思います」

「……ええ。そうさせてもらうわ」

謝罪をしてから、真理子はもうあれこれと口出ししてくることはなかった。義両親は予定よりも早めに義実家へと帰ることになり、兜飾りも持ち帰ってくれた。

来たときとは別人のように背中を丸めて帰って行った真理子を見て、言いすぎたかもという考えがよぎったが、ようやく積もり積もっていた不満をぶつけることができたので悪くない気分でもあった。

玄関のドアが閉まった後、リビングに戻ると遊び疲れた璃空がマットの上ですやすやと寝ていた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。