攻守逆転の朝

劇的に薬が効いたのか、単に花粉のシーズンが終わったのか、薬を飲むようになって半月ほどが経ったころ、咳の症状はすっかり収まっていた。

その日は仕事が休みだったので、成美はいつもよりもゆっくりと睡眠をとってから洗顔と一緒にすっかり習慣になっている鼻うがいをした。

洗面所を離れて時計を確認すると10時を回っていた。いつもなら正弘も起きてくる時間なのに今日はまだ寝室から出てこない。成美がまだ寝てるのかと寝室に様子を見に行くと、正弘はうつろな表情でベッドに寝ていた。

「正弘、何してるの? 早く起きてご飯を食べようよ」

正弘は口をもごもごと動かして反応を示した。起きてはいるのになぜか目を開けようとはしない。

「どうしたの?」

「……いや、なんか熱っぽくて。起きれそうにない」

そう言われて成美は反射的に額に手を当てた。

「あちゃ、これ風邪だね。最近無理してたからそのしわ寄せが来たんじゃない?」

そう言って成美は部屋を出ようとした。すると正弘が軽く成美の腕を握った。

「……ちょっと風邪薬と水を持ってきてくれないか?」

言われなくてもそうしようと思っていたが、苦しそうな正弘にふと咳に苦しんでいた自分が重なった。