手取り1億円で、老後は足りるか

厚生労働省の最新調査※によると、フルタイムで働く人の平均月給は34万600円。前年より3.1%増え、過去最高水準を更新した。賃上げが続いているというニュースが相次ぐ中、給与明細を見て実感できている人もいれば、そうでない人もいるだろう。

※厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年3月24日発表)

老後資金を考える際、貯蓄や年金だけで生活が賄えるのか。平均月給をもとに試算してみたい。22歳で就職し、60歳まで38年間、働く。その間の月給をならして平均34万円とすると、生涯賃金は約1億5500万円となる。これはあくまで額面の数字であり、所得税や社会保険料などを引いた手取りで考えるとおよそ月給27万円前後となり、38年間の手取り総額に直すと約1億2300万円となる※。

※東京都在住、扶養なし、22〜60歳までの平均的な試算(所得税:「給与所得の源泉徴収税額表(令和 7 年分)」(国税庁)、住民税:総務省「個人住民税」、健康保険料:「都道府県毎の保険料額表」令和7年度(全国健康保険協会)、厚生年金保険料:「厚生年金保険料額表」(令和2年9月分~)(日本年金機構)等)

1億円を超えると大きく感じるが、そこから水道光熱費、住居費、食費、雑費、冠婚葬祭費など、38年分の生活費をすべて賄う。老後のためにいくら残せるかは人によるが、「気づいたら大して残っていなかった」となったらどうすればよいのか。

そこで頭に浮かぶのが公的年金だ。65歳以上の単身無職世帯の家計収支は毎月の生活費が約15万円、標準的な年金受給額は約12万円とされている※。この場合、毎月3万円ほど足りない。20年間で720万円、30年間なら1080万円が不足する。

※総務省「家計調査報告 家計収支編」(令和7年)

ここで考えたいのがiDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)の活用だ。例えば月2万円をiDeCoに拠出し、年率3%で38年間運用できたとする。元本は912万円だが、運用益を再投資することで長期にわたって資産が積み上がり、受取時の資産額は約1700万円となる計算だ。老後の不足分720万〜1080万円に対して、相当な補完となるだろう。

iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となる。月2万円を拠出している間、所得税・住民税合わせて年間数万円の節税効果も得られる。掛金を積み立てながら、今の税負担も軽くなる。

34万円という平均月給は、確かに過去最高を更新した。しかし物価高を考慮すれば、増えた分の賃金は生活費に消え、実質的な余裕は増えていないと感じる人も多いのが現実だろう。だからこそ、給料から漫然と貯金するだけではその価値がさらに目減りしていく可能性がある。 税制優遇を受けながら運用に回すiDeCoのような仕組みで、効率的に「お金にも働いてもらう」視点が必要だろう。今のうちに老後資金にも少しずつ手を打っておくことを考えたい。