受診してすぐに請求できるわけではない

障害年金では、その障害で初めて医師の診療を受けた日、つまり「初診日はいつなのか?」というところからスタートします。母親によると、幹太さんは今まで精神科や心療内科を受診したことはないとのこと。つまり幹太さんはこれから初めて医師の診療を受けることになります。幹太さんは20歳から現在まで国民年金に加入しており、保険料に未納はないということも分かりました。

以上のことから、幹太さんは障害基礎年金を請求することになります。障害基礎年金には1級と2級があり、仮に2級に該当した場合、金額は次のようになります。

障害基礎年金 7万608円
障害年金生活者支援給付金 5620円
合計 7万6228円
※2026年度のものでいずれも月額

金額を確認した母親は言いました。

「月に約7万6000円。これだけあれば生活はずいぶんと楽になります。長男に受診してもらって、すぐに障害基礎年金の請求をしたいと思います」

「残念ながらそれはできません。なぜならルール上、初診日から1年6カ月が経過した日以降に請求することになっているからです」

「そうなのですか。受診してすぐに請求できるわけではないのですね……」

母親は落胆の声をあげました。

「なお、初診日から1年6カ月が経過するまでの間、できるだけ受診は続けることが望ましいです。病院に出向くのが困難であれば、医師が自宅まで来て診てもらう訪問診療がよいかもしれません」

「長男は外出が困難なので、訪問診療の方がよさそうですね。それをすれば、長男は障害基礎年金を受給することができるのでしょうか?」

「障害基礎年金が受給できるかどうかは、医師の作成する診断書の記載内容でほぼ決まります。精神疾患用の診断書には『どのくらい日常生活が困難なのか』を証明する欄があります。その記載内容とその他の情報をふまえ、国が障害基礎年金を支給するかどうかを判断します。よって、主治医には普段からご長男の様子を伝えておく必要があるのです」

「何だか難しそうですね……。果たして私にできるかどうか」

「それは大丈夫です。ご長男の同意が得られれば、私も請求に向けてご協力できるからです。もしご長男が望めば、私から障害年金の説明もできます。顔を合わせての面談が嫌であれば、インターネットを利用したweb会議でも構いません。もちろん音声だけの参加で大丈夫です。何はともあれ、まずはご長男が同意を示し、医師の診療を受けるところから始めることになります」

「わかりました。長男にもそのように伝えてみます。私だけでは不安なので、先生にもお手伝いいただけると心強いです」

ここで初めて、母親はほっとした表情を見せました。