会話なき夫婦の末路

それから2週間が経ったころ、学生時代からの友人で長らく九州で働いていた徹が東京に戻ってくるというので会うことになった。

直接会うのは10年ぶりだったが、居酒屋の席について酒を飲めば会っていなかった時間は一瞬で埋まった。

「そういや下の子、もう大学卒業だっけ?」

徹の質問に、枝豆をつまんでいた拓郎は首を横に振った。

「卒業したのはおととしだな。もう会社員として働いてるよ」

「ああ、そっか。ひとり暮らししてるのか?」

「そうかそうか。じゃあひとまず安心だな。ってことは今は夫婦水入らずだな。うらやましい限りだよ」

徹は5年前に離婚をしていてそれ以来1人で生活をしている。

「……別にそんないいもんじゃない。ほとんど話したりもしないし、1人で暮らしてるのと同じだよ」

拓郎が現状を話すと徹は目を丸くしていた。

「……え? 全く?」

「ああ。でもそんなのどこの家庭も一緒のようなもんだろ?」

「いやいや、そんなことないぞ。うちはそれで離婚したんだ」

「会話がないから離婚したってのか?」

「そうだよ。うちも離婚する前は全然会話がなかったんだよ。俺はそれで普通だと思ってたんだけどいきなり向こうから離婚するって言われてさ。でも、珍しくもないらしいよ。会話がないときってもう相手からすると関係性は終わっていて、離婚に向けての準備をしてるんだと。だから拓郎も気をつけておいたほうがいいぞ」

「……いやまあ、うちのは大丈夫だよ。そんな大それた決断、できるような女じゃない」

拓郎はそう笑って、ビールを飲んだ。もう泡は消えていて、いつの間にかぬるくなっていた。