NISAは短期売買に向いた制度ではない

こうした視点で市場を眺めていくと、NISAという制度そのものが、短期的な売買判断と必ずしも相性の良い仕組みではないことにも気付く。

まず、NISAでは損益通算ができない。課税口座であれば、損失が出た場合に他の利益と相殺することができるが、NISAではそれができない。価格が一時的に下がった局面で売却してしまうと、その損失は制度上なかったものとして扱われる。

さらに、NISAでは保有資産を売却した場合、その簿価ベースの非課税枠は翌年以降に復活する仕組みになっている。売却後すぐに同じ枠を使い直すことはできず、機動的な売買を前提とした設計ではない。損益通算ができず、非課税枠の再利用にも時間がかかる。この2点を合わせて考えると、NISAは頻繁な売買を前提としていないというより、暗に推奨していない制度だと言える。

「売る」という判断は出口戦略になっているか

資産運用で失敗する人の多くは、買うタイミングを誤ったからではない。むしろ、売る理由が曖昧なまま売却してしまった結果、長期的な成果を取り逃がしているケースが多い。

典型的なのが、目先の利益に満足して早々に利益確定してしまうケースだ。値上がりしたこと自体は間違いではないが、売却した資金に明確な使い道がないまま現金化してしまえば、その資金は運用の機会を奪われたまま時間だけが過ぎていく。結果として、本来得られたはずの機会を自ら手放してしまう。

NISAの積立投資においても、「利益が出たから一度売る」「不安だから現金化する」といった判断は、一見すると慎重に見える。しかし、その資金をいつ、何のために使うのかが定まっていないのであれば、合理的な売却とは言いにくい。長期投資を前提として、投資期間を定めずに積立をしている場合は特に、リバランスを目的としている、または、明確に次の投資先が決まっているということでなければ、早期の売却はおすすめしない。

筆者は、資産形成における機動的な売買そのものを否定するつもりはない。ただ、それを戦略として用いるには、投資対象や市場構造に対する相応の理解が欠かせない。何となく売るのか、前提を理解した上で売るのか。その違いが、長期の成果を大きく左右する。