当面の財務悪化が懸念 資金繰りタイト、増資ある?

株価の下落は、当面の財務悪化が懸念されたものだと考えられます。

ニッスイが買収を公表したのはペスケラ・ヤドラン社です。チリでサーモンの養殖事業を営んでおり、アメリカなどグローバル市場へ販売チャネルを有します。ニッスイは南米養殖を拡大する方針で、今回の買収はその一環と考えられます。ニッスイは、ヤドラン社の完全子会社化を計画しています。

しかしながら、ヤドラン社は足元で苦戦しています。直近の24年12月期は売上高が前期比で18.6%減となり、営業損益は33.3億円の赤字となりました(1ドル=155円で換算。以下同)。子会社の赤字は連結親会社の利益を減らすため、株価はニッスイの業績悪化を織り込んでいる可能性があります。また、買収に伴い償却費の増加も見込まれますが、これも収益を圧迫する要因です。

別の視点として、株価の下落は増資懸念が含まれているかもしれません。ヤドラン社の買収費用206億円に対し、ニッスイはフリーキャッシュフローが100億円、現金および現金同等物は187億円です(25年3月期)。買収額に対して内部資金はタイトな印象で、追加的な資金調達が想定されます。投資家の中には、増資による希薄化を連想する人もいるでしょう。

ただし、ニッスイは28年3月期までの資金調達方針として「信用格付けを活用」としており、当面は増資より借り入れや社債の発行を優先する方針を示唆しています。

また、ニッスイはネットDEレシオ(純負債資本倍率)の目標として28年3月期末で0.7~0.8倍を設定していますが、25年3月期は同0.69倍と余裕があります。自己資本は2770億円に達しており、仮に206億円の全額を有利子負債で調達しても、同指標への影響は0.07倍程度の増加にとどまります。

さらに、ニッスイは資本政策としてROE(自己資本利益率)の維持を掲げています。株式による資金調達は自己資本を増加させるため、増資はこの方針と逆行します。これらの要因から、資金調達は増資よりも有利子負債が選択されやすい状況です。

株価の焦点はシナジーに移っていくでしょう。買収により、ニッスイは短期的には財務の悪化は避けづらい状況です。買収資金の流出のほか、連結で健全性の悪化が想定されます。ヤドラン社は、24年12月期で純資産247.5億円に対し、負債は416.7億円に達します。損益上も、先述のとおり償却費の増加が課題です。これらを上回るシナジーが確認されれば、株価は上昇しやすいと考えられます。