注力3分野に350億円投資 期待の全固体電池は顧客実証ステージへ
株価をけん引するもう1つの理由と考えられるのが中長期の見通しです。マクセルは27年3月期を最終年度とする中期経営計画の推進中で、売り上げおよび営業利益のさらなる成長を見込んでいます。
マクセルは高成長事業への集中を引き続き強化し、成長の実現を目指します。「モビリティ(耐熱コイン形リチウムイオン電池など)」と「ICT/AI(半導体工程用テープなど)」、「人/社会インフラ(医療機器向け一次電池など)」を注力3分野と位置付け、350億円の成長投資を行う方針です。これは前回の中期経営計画(同173億円)の2倍超となる水準です。
また、ROICとROEも向上させる計画です。期間中は累計で総還元性向100%以上とし、当期の利益以上を株主へ還元することで資本効率を改善します。
【主な財務目標(~27年3月期)】
・売上高:1500億円(25年3月期実績:1298億円)
・営業利益:120億円(同93億円)
・ROIC:7.5%(同5.8%)
・ROE:10.0%(同4.4%)
出所:マクセル 中期経営計画
また、新事業への取り組みも注目を集めています。マクセルは新事業として全固体電池を展開しており、その成長が期待されています。
全固体電池は各社が開発に乗り出していますが、その中でもマクセルは先駆的です。すでに製品化は完了しており、現在はその他の部品と組み合わせたモジュールがFA(工場自動化機器)向けで顧客実証のステージにあります。25年8月にはSUBARUの自動車工場でテスト運用を開始しました。マクセルによると、SUBARUでのテスト運用開始後は新たに10社以上から引き合いがありました。
なお、全固体電池は立ち上げ期にあり、計画期間中は若干の赤字が続くという認識です。つまり、上述の財務目標は全固体電池の成長を織り込んでいません。
全固体電池の収益への貢献は、28年3月期以降を想定しています。計画どおりなら、利益は当面は既存事業が、長期的には全固体電池がけん引する見通しとなっており、継続的な成長が期待されます。