オークション会場の新設にはハードル 円安で中古車は成長続く

足元でオークション事業は好調ながら、成長戦略にはやや手詰まり感もあります。ユー・エス・エスは現在19会場を運営しますが、商圏の重複などから有望な候補地が定まらず、20会場目の新設や取得は難しいという認識です。当面は既存会場のテコ入れに注力し、シェアの拡大を目指します。

もっとも、外部環境に目を向けると、オークション事業は自律的な成長も期待されます。中古車の需要は増加傾向にあるためです。需要はユー・エス・エスの成約単価にも表れており、25年3月期は平均120.6万円と、5年前(同68.8万円)から1.7倍に上昇。今期(26年3月期)は9月に130万円台に達しました。

要因の1つとみられるのが円安です。海外から見ると相対的に安く取得できることから、海外バイヤーが需要を押し上げていると考えられます。実際に中古車の輸出は150万台まで増加しており、コロナ禍の影響を受けた20年の106万台から回復が進みました。輸出は中古車需要の3分の1を占めるとされており、その動向は市場に大きな影響を与えます。

日本の中古車輸出台数と為替(2014年~2024年)
 
出所:ユー・エス・エス データブック、日本銀行 外国為替相場状況(月次)より著者作成
 

国内にも需要の増加要因があります。自動車の所有から利用への意識変化からカーシェアリングやリースが成長しており、これらのサービス向けに中古車の需要が高まりやすい状況です。また、インフレによる家計の圧迫も、消費者を比較的安価な中古車へ向かわせていると考えられます。

ユー・エス・エスは、会場の増設には一定の制約がありますが、上記の要因などから中古車の需要は底堅い状況です。同社のオークション事業には、当面は追い風が吹きそうです。