各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、西日本シティ銀行のデータをもとに解説。

西日本シティ銀行の投信売れ筋ランキングの2025年10月のトップは前月第3位だった「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」になった。前月トップだった「のむラップ・ファンド(積極型)」は第2位に後退。第3位には前月第8位だった「ニッセイ日経225インデックスファンド」がジャンプアップした。前月第2位の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は第4位になった。また、前月第10位だった「はじめてのNISA・米国株式インデックス(S&P500)」が第7位に上がるなど、純金価格に連動するファンドや日米の主要インデックスに連動するインデックスファンドなど単純にリスク資産に投資するファンドが人気化している。

 

10月はリスクオンでインデックスファンドに人気

西日本シティ銀行の売れ筋トップは9月まで3カ月連続で「のむラップ・ファンド(積極型)」だった。国内外の株式や債券、REIT(不動産投信)に分散投資するバランス型ファンドで、投資対象資産の期待リターンやリスク、各資産の相関係数等を長期的な観点から分析し、資産配分比率を3カ月ごとに見直している。2010年3月の設定から15年以上の運用実績があり、「普通型」は設定来2025年10月末までの平均年率リスクが9.9%、平均年率リターンが7.3%。「積極型」は平均年率リスクが12.9%、平均年率リターンが10.0%という運用成績を残している。バランス型ファンドとして意図したリスク水準以上のリスクを取らないよう慎重に運用されているファンドだ。

一方、10月にトップに立った「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」は、スイス籍の米ドル建て投資信託で主に金の現物に投資することで金価格の動きに連動する「ピクテプレシャス・メタル・ファンド-フィジカル・ゴールド」に投資することで、実質的に金の現物に投資するファンドだ。金には絶対的な価値があるといわれるものの、ここ数年の価格上昇率はすさまじく、現在の価格水準がいつまで保たれるのかどうか判断が難しいところとなっている。さらに、為替ヘッジなしということで為替変動のリスクもある。価格変動リスクや為替リスクにさらされるリスクの高い商品ということになる。

9月までリスク管理に慎重なラップ型ファンドがトップにあったのが、10月は一転して積極的にリスクを取りにいく商品に資金が集まった。リスクの高い商品ということでは、第3位に上がった「ニッセイ日経225インデックスファンド」や第7位に上がった「はじめてのNISA・米国株式インデックス(S&P500)」などの株式インデックスファンドも同じだ。インデックスファンドは一見リスクが低いようにみえるが、株価指数そのものに投資することになるので、株式の価格変動リスクは投資家が全て引き受けることになる。米国株インデックスファンドの場合は、ドル円の為替変動リスクにもさらされる。

当然ながら、相対的に高リスクな商品の人気が高まったのは、純金価格や株価が勢いよく上昇し、価格変動リスク以上にリターンを得られる機会だと考えられたためだろう。実際に、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」の基準価額は8月末から10月末までの2カ月間で22.53%上昇し、「ニッセイ日経225インデックスファンド」は同期間に23.47%上昇した。「はじめてのNISA・米国株式インデックス(S&P500)」は10.21%の上昇率だったが、これまでの上昇率から国内株が上げているのであれば、それ以上の上昇が期待できるという期待感があったと考えられる。この同じ期間に「のむラップ・ファンド(積極型)」の上昇率は7.50%だった。2ケタ上昇しているファンドと比較すると上昇率が物足りないと感じられたのかもしれない。