各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、SMBC日興証券のデータをもとに解説。
SMBC日興証券の投信売れ筋ランキングの2025年10月のトップは、前月第2位だった「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(為替ヘッジなし)」が上がった。第2位にも前月第3位だった「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が上がっている。前月トップだった「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」は第3位に後退した。そして、第4位には前月第8位だった「インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド」が、第5位には前月第9位だった「日経225ノーロードオープン」がそれぞれジャンプアップした。一方、前月第4位だった「ドナルド・スミス グローバルディープバリュー戦略株式ファンド」は第7位に後退し、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」も前月第5位から第6位に下がった。また、トップ10圏外から「半導体関連 世界株式戦略ファンド」、「SMT 日経225インデックス・オープン」、「三井住友DS・ゴールドインデックス・ファンド(為替ヘッジあり)」がランクインした。
投信売れ筋ファンドの主流に変化の兆し
SMBC日興証券の売れ筋(オンライントレード(日興イージートレード)における国内投資信託の月間買付金額ランキング)において売れ筋ファンドの主役交代の動きが強まっているようだ。2024年1月の新NISAがスタートしてからは投信市場の人気銘柄は株価指数「S&P500」と「全世界株式(オール・カントリー)」に連動するインデックスファンドと、アクティブファンドでは「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」と「インベスコ 世界厳選株式オープン」の4強といえる状況が2025年2月頃まで続いていた。その流れが転換したのは、4月の「トランプ・ショック(4月2日を『解放の日』として大規模な関税政策を発表)」だった。そして、投信市場では、「ピクテ・ゴールド」や「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド」などが人気を集めるようになってきた。SMBC日興証券では、それに加えインベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンドや「ドナルド・スミス グローバル・ディープバリュー戦略株式ファンド」などに人気が回っている。
2025年の年初まで強い人気があった『4強』に共通していたのは、「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれた米国大型テクノロジー株式(アルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディア)に集中したポートフォリオだった。M7は時価総額が大きいがゆえに「S&P500」や「全世界株式(オール・カントリー)」の組み入れ上位銘柄となってきた。「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」も米国成長株の動きを捉えるためにはM7が無視できない存在であった。「インベスコ 世界厳選株式オープン」は組み入れ上位銘柄でM7の存在感は薄く、2024年3月末時点でも「マイクロソフト」しか組み入れ上位に入っていないが、そのパフォーマンスをけん引していたのは「マイクロソフト」や「ブロードコム」といった米ハイテク大型株だった。
「M7偏重」は、2020年から2024年までの株式市場が「M7」中心に動いていたため、インデックスファンドは当然ながら、アクティブファンドにおいても「M7」を外して運用戦略を作ることは難しかった。たとえば、株価が調整安となった2024年7月末まで3年間で「S&P500」は25.6%上昇したことに対し、「M7」は87.6%上昇していた。圧倒的なパフォーマンスで「S&P500」(500社)に占める「M7」(7社)の比率も2000年は約16%だったが2024年7月には30%以上に高まっていた。特に2023年5月頃から「M7」の上昇は顕著になった。ところが、2025年になって「M7偏重」に変化が起こっている。「M7」の中で別格の株価上昇を続ける「エヌビディア」とその他で開きがあるほか、「テスラ」が悪材料に弱いなど、「M7」の中での格差が広がっている。また、「M7」には株価の割高懸念があり、業績の変化に対する株価の反応が大きくなりがちだ。そもそも入れ替わりの激しい最先端のテクノロジー分野であるだけに、いつまでも「M7」がトップの地位を保っていられるわけでもないだろう。
売れ筋ランキングでトップに立った「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(為替ヘッジなし)」が、今後の人気株として定着するかどうかはわからない。同ファンドは2024年10月に新規設定されたばかりで、運用期間が1年ほどしかないため、中長期を見通すことがむずかしい。ただ、過去1年のパフォーマンスは株式ファンドよりも大きなリターンを稼いできた「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」を上回る成績だった。今後が楽しみなファンドだ。


