2022年度から、高校の家庭科の授業に資産形成についての内容が加えられることとなりましたが、「私たち社会人にもその機会が欲しかった」という声はよく聞きます。しかし、学校で教えてもらう機会がなかった私たちでも、ポイントを押さえれば、今からでもお金に関する知識を身に付けることができるのです。
代表的な「お金の知識」と日本人の水準
お金の知識というと、どんなことが浮かびますか? 高校の家庭科で2022年度から教わるようになる具体的な内容は、「教育資金、住宅取得、老後の備えの他に、事故や病気、失業などリスクへの対応が必要であることを取り上げ、預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット、デメリット)、資産形成の視点」といったもののようですが、世界各国で行われているお金に関する知識を問う調査では、基本的な3つの質問項目があります。
1 複利に関する設問
100万円を年率2%利息がつく口座に預けると、5年後の残高はどうなるでしょう?
2 インフレーションに関する設問
銀行の預金金利が1%、物価上昇率が2%の時、1年後にこの口座のお金でどれだけの買い物をできるでしょう?
3 リスク分散に関する設問
「一社の株を買うことは投資信託を買うより安全な投資である。」これは合っているでしょうか?
これらの回答結果を見ると、日本人の成績が著しく低いというわけでもないのですが、長くデフレ経済だった影響からか、インフレーションに関する設問の正答率は低い傾向にあります。また、2019年に日本で行われた金融広報中央委員会による「金融リテラシー調査」では、金融教育を受けたことがあると認識している人の正答率は、受けたことがない人の正答率を上回っていました。このことからも、知識を身に付けておくことは重要だと考えるのが良いでしょう。
最低限身に付けるべき金融リテラシー(お金の知識)とは?
お金の知識というと、節約や儲かる方法に目が行きがちですが、本来は日々のお金の管理から考える必要があります。
金融経済教育推進会議が公表する金融リテラシー・マップでも、小学校低学年から高齢者までそれぞれの年代に対して、①家計管理②生活設計③金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択④外部の知見の適切な活用――といった、日常的なお金の管理にも関係する4分野を「最低限身に付けるべき金融リテラシー」として具体的に示しています。
項目名だけを見ると難しく見えがちですが、たとえば、社会人になってある程度の年数が経過すると、収支のバランスを考える余裕も出てくるでしょう。誰しも、一生涯に得られる収入に限りがある中で、住宅を買ったり、子どもを学校に通わせたり、老後のお金も蓄えたりといった自分のライフプランの実現のための資金を準備する必要があります。
そのためには、日々の生活をコントロールしながら、ローンを組むのか、保険などの商品を組み合わせるのか、貯蓄にするのか、NISAやiDeCoなどを使って運用しながら増やして準備するのか、自分に合った方法を探して金融商品を購入しなければなりません。こうした一連の行動を起こすために必要なのが、先ほどの4分野であり、言い換えれば「最低限の金融知識」とも言えるでしょう。
金融商品は、購入後は自分の資産になりますから、価値・価格がどれくらいになっているか定期的なチェックをし、ライフプランが実現できそうかを見直し、必要に応じて作戦を変えていくことも重要です。ライフプラン実現のための基本的なお金の知識を身に付けることで、計画を立て、実行し、見直し、必要に応じて調整していくということが可能になるのです。