松井証券の投信売れ筋ランキングの2025年2月のトップは前月の第6位から「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」(愛称:世界のベスト)がジャンプアップした。第2位には前月3位の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)が浮上。前月トップだった「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は第5位にまで後退し、前月第2位だった「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は第3位になった。また、第4位にはトップ10圏外から「日経225ノーロードオープン」が飛び込んだ。売れ筋上位に大きな変動が起こっている。2月にランキングが上昇したのは全世界株式と国内株に投資するファンドだった。
◆「世界のベスト」の先見性
松井証券の売れ筋ランキングのトップに「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」(愛称:世界のベスト)が浮上した。同ファンドは新興国を含む世界の株式の中から、景気動向に左右されず持続的な成長が期待できる(1)競争優位性の高い企業、(2)安定性の高い事業を展開する企業、(3)継続的な配当や増配などの質の高い配当を行うことが期待できる企業を厳選して投資をしている。積立投資において圧倒的な人気を誇るインデックスファンド「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)と投資対象を同じくするアクティブファンドだ。
2月のランキングでは米国株式インデックスファンドである「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が1月のトップから第5位にまで大きく後退し、米国を含む全世界株式を投資対象とした「世界のベスト」と「オルカン」がトップと第2位になった。インデックスファンドよりもアクティブファンドが優位になっている。この動きは、現在の世界の株式市場に対する投資家の態度をよく表しているように感じられる。
世界の株式市場は、2025年2月半ばまで米「S&P500」が市場最高値を更新し、欧州の英「FTSE100」やドイツ「DAX」は3月に入っても史上最高値を更新している。米国「NYダウ」と「NASDAQ総合」は2024年12月にピークをつけたのに対し、「S&P500」や英独の株価は2月・3月になっても高値を更新したことで、違いが出ている。インドは前年後半から低迷期に入り、中国の株価が2025年になって生成AI(人工知能)企業「DeepSeek」の話題とともに出直り始めている。2020年3月のコロナ・ショック以降にみられたような米国株式が世界の株式市場をけん引するという構図ではなくなってきている。そこには、世界各国に対して関税を振りかざして交渉を迫る米トランプ大統領の強引な政策によって米国経済の先行きが危ぶまれているということも背景にあるだろう。
その環境の中で、「世界のベスト」は、2024年12月末時点のポートフォリオで北米をアンダーウエートにし、欧州をオーバーウエートにした(2024年10-12月の運用報告レポートより)。また、業種別ではIT(情報技術)とコミュニケーション・サービスをアンダーウエートにして金融と資本財・サービスをオーバーウエートにした。従来の「マグニフィセント・セブン」といわれた米大型ハイテク株にリードされた株式市場の動きとは一線を置く姿勢を鮮明にしていた。もとより、同ファンドでは市場の動きに追随するようなことをせず、「成長」「配当」「割安」という基準で高く評価できる企業について中小型株も含めて厳選投資するという姿勢を持っていた。しかし、今まではそのような調査分析の結果が、余りにも大きな「マグニフィセント・セブン」の株価上昇によってかき消されてきた。
2月後半から3月にかけて米国の株価が下落し、欧州株価は高値を保っている。また、これまで米国株高をリードしてきたエヌビディアの株価が1月の150ドル前後の高値から3月には110ドル台に下落するなど半導体関連株をはじめとするハイテク株が不調になってきた。「世界のベスト」が2024年12月末に欧州株をオーバーウエートにし、ITをアンダーウエートにしたポートフォリオは、その後の株式市場の動きを先読みしたかのような動きになった。その結果、2025年2月末時点の1年トータルリターンは「世界のベスト」が14.95%と「オルカン」の13.95%を上回り、過去3年(年率)でも「世界のベスト」23.10%で「オルカン」の18.72%を上回っている。
今後、株式市場の先行きが不透明になればなるほど、インデックスファンドに対してアクティブファンドの優位性が際立ってくると考えられる。これからはアクティブファンドの腕のみせどころといえるだろう。