親が残した相続財産は自分のもの。そう思っていないだろうか。しかし、その大部分を赤の他人にとられてしまうこともある。今回は親の面倒を見ていた介護士に遺産の半分を奪われてしまった一健(かずたけ)さんの話を紹介しよう。
「財産のすべてを介護士に」衝撃の遺言書
長年、病床に伏していた父の亡き後、相続手続きを進めていた一健さん。介護士の相馬さんから遺言書を見つけたと連絡を受け、実家に駆け付けた。この遺言書こそが今回の騒動の原因となる。
一健さんは、父の生前10年以上介護を続けていた介護士の相馬さんとともに遺言書を開封してみる。すると中には「私の財産のすべてを介護士の相馬に相続させる」と記されていた。一健さんにとって、これは想定外の事態。
父の遺産は総額1000万円ほどでそう多くはない。すでに母は他界しており兄弟もいない。だからこそ当然自分が全額相続するものだと考えていた。しかし、遺言書の内容は明らかにそれを否定するものであった。
「どうしてだよ……」
一健さんは言葉を失ってしまう。
正直こうなるのも無理はない。一健さんは要介護状態にある親とほとんど会っておらず介護も介護士にすべて任せきりだった。次第に父は相馬さんに深い信頼を寄せ、遺言書の内容を変更してしまったのだ。特に、高齢であるなどして認知機能が低下していた場合、身近に存在する特定の人物が強く影響を与えることも珍しくはない。
今回のケースもそうだ。このようなケースは昔から少数ではあるが存在していた。しかし現代では、子が介護サービスを利用して直接介護を行わないことも珍しくなくなった。そのため近年は、以前に比べてわずかながらではあるが、同様のトラブルを耳にする機会が増えたように感じられる。