2024年の新NISA開始を契機に、世間では投資の話題が少しずつ身近になっている。しかし、依然として「投資や保険、とにかく金融は難しい」という印象は根強く、生活者と金融の距離は縮まりきれていない。こうした現状を変えるべくフィンテック企業のMILIZEでは業界改革を推し進めている。「私たちが真のフィンテック」と語る代表取締役社長・CEOの田中徹氏に、テクノロジーが可能にする金融の未来と、その先に生活者が享受できる恩恵について話を聞いた(全2回の2回目)。

個人の家計が豊かになり、若い優秀な人が世界に飛び出す未来へ

――テクノロジーでスマートに人生設計ができ、資産を守れる未来が来れば、生活者はどのような点でメリットを感じやすくなるでしょうか。

例えば不必要なのに高額な保険に入り続けているとか、住宅ローンの借り換えをせずに高い金利を払い続けていることに気づいたとします。でも、不思議なことに多くの日本人は契約を見直しません。

「○○生命の友達から保険に加入したから解約できない」「家を買う時になじみの不動産屋が紹介してくれたから、○○銀行の住宅ローンを続けなきゃダメなんだ」と言います。金利や諸条件を契約し直せば、住宅ローンを借り換えるだけで、今後20年で300万円以上の節約になるかもしれないのに。

ニーズを見直して不要であれば契約を止めたり、もっとコストの低い商品に乗り換えたりする。そういったことを助言するサービスが行き届けば、―生涯で1000万円~2000万円ぐらいはコストセーブできる人もたくさん出てきます。必要以上に払っている金融機関への手数料を家計に取り戻し、それを元手に、コストの安い投資信託で長期分散投資した場合、3000万円~4000万円の老後資金を手に入れることも可能になるかもしれません。

家計にゆとりが出た人々が、外食を増やそう、旅行に行こう、世の中のために使おうと考えれば、お金が巡り巡って経済が回るようにもなる。結果的に個人も国も豊かになると思います。

反面、リテラシー高く行動できる人が増えると、銀行や保険会社は、目先は手数料が減って、組織のリストラクチャリングが起きるかもしれない。しかし、それは銀行で働く人にとってもチャンスです。

銀行の中には、銀行員じゃなくても、日本や世界で活躍できる優秀な人がたくさんいます。私はカレー屋で起業しましたが、ある人は銀行を飛び出しておいしいラーメン屋チェーンを創業するかもしれないし、ある人は世界的に有名な起業家になって、世界に影響を与えるかもしれない。そういう意欲や能力のある人たちが世に出る機会が増えれば、わが国は活力に満ちた素晴らしい国になるだろうと思います。

そして銀行や保険会社には、高い処遇のためでなく、金融で人を豊かにすることが大好きな人たちが残るでしょう。デジタルの力でそれは実現可能です。それこそ金融DXです。