8月の株価下落が当然だった理由

日経平均株価を例に考えてみましょう。同指数は東京証券取引所プライム市場に上場する主要な225銘柄で構成する平均株価で、その妥当水準は225社がこれから稼ぐと予想される通期の1株当たり純利益(EPS)の平均値を元に判断するのが基本。現在(執筆時)はもっぱら2024年度の予想EPS平均をベースとしますが、当然、その値は時の経過とともに変化します。

例えば、前期(2023年度)の決算が出そろった5月半ば時点の値はおおよそ2200円で、この値は次の四半期決算の発表が一巡する8月半ばごろまで判断の基準となります。日経平均株価は7月に4万2000円台の史上最高値をつけましたが、この値を2200円で割った値=予想株価収益率(予想PER)は19(倍)超となりました。

過去をさかのぼると、予想PERの許容水準はせいぜい16.5(倍)程度まで。つまり、7月の高値は「あまりにも割高な水準」ということになり、後に一定の調整(下落)局面を迎えるのは当然のことでした。

その後、一時的にも3万1000円台まで大きく下落した場面では、予想PERが14倍台前半まで低下し、今度は「あまりにも割安な水準」となりました。株式投資の鉄則は『割高を売り、割安を買う』。9月初旬に指数は3万9000円付近まで一時値を戻す場面もありましたが、この時点では既に4‐6月期決算の発表が一巡しており、予想EPS平均は2430円あたりにまで引き上げられています。

よって、3万9000円の予想PER=16倍ということになり、再び株価は妥当を思われる水準に収斂(しゅうれん)することとなりました。こうした「基本のキ」を押さえておけば、相場が上下に大きく振れるような場面に遭遇しても付和雷同(ふわらいどう)せずに済むものと思われます。