現在、亡くなった人の15人に1人が身寄りがなく、行政機関に火葬されるといわれています。

核家族化やライフスタイルの多様化の影響もあり、家族で支え合うのが難しい時代です。たとえ、結婚し、子どもがいたとしても、一方と死別したり、子どもと疎遠であれば、いつ誰にも頼れない状況に置かれるかはわかりません。ひとりで老後を迎えると、住居の確保、介護や入院の手続き、お墓、そして遺産はどうなるのでしょうか? 

「ひとり老後」を巡る課題やトラブルは日に日に関心が高まっています。そんななか、長年、この問題を研究してきた日本総合研究所シニアスペシャリストの沢村香苗氏の新刊『老後ひとり難民』が話題となっています。今回は特別に本書より、ひとり老後に陥ってしまうリスク、病院や自治体などの現場が直面する課題などをお届けします。(全4回の4回目)

●第3回:相続人不在の財産は年800億円。一大マーケットとなった “遺贈ビジネス”の功罪

※本稿は、沢村香苗著『老後ひとり難民』(幻冬舎)の一部を抜粋・再編集したものです。

終活のポイントを整理し、一つずつ取り組む

高齢期に家族の助けが得られない「老後ひとり難民」は社会問題になりつつあります。そして、心身の衰えにともなう生活上のトラブルから死後の対応まで、その問題は多様で複雑です。

たとえば金銭管理については「支払い手続きができない」「詐欺にあってしまう」、財産管理や住居については「維持管理ができない」「転居の手続きや作業ができない」、医療や介護については「支払い手続きができない」「意思決定が困難」、死後事務については「火葬や納骨をする人がいない」などのさまざまな問題があります。

これらの問題については、一部は自治体が対応する部分もありますが、多くはケアマネジャーや医療ソーシャルワーカー、成年後見人などが担っており、「職務範囲外のボランティア的支援」によって支えられている部分もかなり多いといえます。

「身元保証等高齢者サポート事業者」のなかには、契約した顧客に対して横断的なサービスをうたうところもありますが、このようなサービスは価格的に安くはないため、誰でも利用できるわけではありませんし、事業者によりサービスの内容も異なります。

いずれにしても、課題把握と課題に対する支援が〝パッチワーク状態〟になっていることは否めません。

「老後ひとり難民」が抱える問題は、一つ一つ対応する官庁が異なりますし、ひとくちに「老後ひとり難民」といっても、認知機能や資産額の違いによって「必要なこと」や「対応可能なこと」も異なるため、「社会共通の問題」として全体像が認識されづらいという特徴もあります。

このような事情から、多くの問題は解決には至っていないのです。現在のところ、残念ながら「これさえやっておけばいい」という理想的な解決策はありません。