日経平均が4万円を超える――。

ほんの数年前には、この状況を想像するのは難しかったものの、人気エコノミストのエミン・ユルマズ氏は、地政学的観点から一貫して日本経済の復活とインフレの到来を主張していました。

そして、今は「米中新冷戦」の真っただ中。そんな世界情勢のなかで、日本に訪れるリスクとチャンスはどのようなものなのか、書籍『エブリシング・バブル 終わりと始まり』よりお届けします。(全2回の1回目)

※本稿は、エミン・ユルマズ『エブリシング・バブル 終わりと始まり 地政学とマネーの未来2024-2025』(プレジデント社)の一部を抜粋・再編集したものです。

「戦争」は意外と身近なところにある

南シナ海や台湾における有事は、日本にとって他人事ではない。

しかし、日本はこれまで長い間、国の周辺で有事がなかった。唯一、日本の周辺国で有事が生じたのは、朝鮮戦争だろう。

ご存じのように、第二次世界大戦後に分断国家となった、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国との間で生じた戦争だ。金日成率いる北朝鮮が、両国の国境線としていた38度線を越えて、韓国に侵略戦争を仕掛けようとしたのが1950年のことだから、かれこれ74年も昔の話になる。

以来、現在に至るまで地球上のどこかで常に戦争、紛争の類(たぐい)が生じているものの、幸いなことに日本の周辺では平和が続いた。今の日本人にとって、戦争や紛争は確かに悲惨なものであると理解していても、どこか他人事なのは、非常に長い間、平和が続いてきたからだ。

それだけに、地政学リスクに関しても、今一つ理解が進まないのではないだろうか。

今、この地球上で実際に起こっている戦争・紛争の類を挙げろと言われたら、真っ先に思い浮かぶのがウクライナとロシアの戦争だろう。それに続いて、イスラエルとパレスチナ・ハマスとの間で起こっている紛争だろうか。

長いこと平和に慣らされてきた日本人にとって、この2つの戦争・紛争は、まったく別の話として認識されているはずだ。

しかし、この2つの二国間紛争はすべてつながっている。

たとえば、ウクライナとロシアの戦争は、ウクライナを軍事支援している欧米や日本などの民主主義国家と、ロシアに見られる専制主義国家の戦いだ。そして、中国は表面上、中立的な立場を取っているように見えるが、専制主義国家という点において、ロシアと近い立ち位置にある。

そして、イスラエルとパレスチナ・ハマスとの間の戦闘でも、米国をはじめとする民主主義国家はイスラエルを支持している反面、パレスチナ・ハマスを支援しているのはイランとロシアであり、ロシアのバックには中国がいる。つまり民主主義国家と専制主義国家の戦いであるということで、根は同じなのだ。

その文脈で考えた時、台湾有事は日本と地理的にきわめて近いところで起こる戦争になるし、それが不幸にして現実化したら、日本は否応なくその戦争に巻き込まれることになる。そのリスクが常にあるとして考え、日本にどのような影響が及ぶのかを分析しておく必要がある。