◆「インフレに勝つ」という資産運用の考え方

一方、みずほ銀行のトップにある「ピクテ・プレミアム・アセット・アロケーション・ファンド」は、株式や債券に加え、金(ゴールド)など株式や債券とは異なる値動きをする資産も加えて分散投資するファンドだ。ピクテ・ジャパンの投資カテゴリーでは「欲張らない投資」にカテゴライズされ、インフレ程度のリターンという比較的リスクが低い運用成果をめざす分類になっている。2023年9月の設定で、運用開始から約9カ月だが、基準価額は5月末時点で設定来で11.95%上昇し、純資産総額も300億円を超えてきた。設定来、安定的に右肩上がりのパフォーマンスを残してきていることから、徐々に月次の資金流入額も増加傾向にある。

また、三井住友銀行のトップになった「三井住友DS ワールド・ボンド・フォーカス2024-05(限定追加型)」は、設定時に購入した債券を約4年後の償還まで持ち続ける運用を行う。外国債券に投資し、為替変動リスクについては為替ヘッジをすることで極力リスクを取らない運用を行う。信託報酬を0.7425%(税込み)と業界最低水準に抑えることで為替ヘッジコストを負担しても年1%程度の運用収益を期待することが可能だ。5月17日に設定し、5月29日まで継続販売が行われ残高が600億円を超えた。債券の持ち切り型の運用は、投資リスクが債券発行体の破綻などに限定されるため、リスク資産への投資に慣れていない投資家が、投資に踏み出す第一歩として使われるケースが多い。国内のインフレが実感されるようになり、ゼロ%台金利の預金では物価上昇で目減りしてしまうことがリスクとして意識されるようになった。価格変動リスクは極力取りたくない場合の一つの手段として一定の支持を得ている。

このようにメガバンク3行の売れ筋トップ銘柄から見えてくるのは、「インフレ」への備えだ。この春の春闘では大手企業の賃上げ率が33年ぶりの高水準となる平均5.58%になったことが話題になったが、インフレ率を加味した実質賃金は、厚生労働省の調査で4月まで25カ月連続のマイナスになっている。賃上げがインフレに追い付いていない。保有する銀行預金までゼロ%金利に置いておけば、賃金の実質マイナスに加えて保有資産も実質マイナス成長と二重にマイナスの痛手を受ける。資産のマイナスは、インフレに強い株式等のリスク資産を保有することでプラスに変えることも可能だ。銀行に期待される役割としてインフレに負けない資産ポートフォリオの提供が期待されているのだろう。

執筆/ライター・記者 徳永 浩