年金額の計算
以下の条件で計算します。
・1983年4月生まれで2023年4月に40歳
・大学生在学中は国民年金に加入し、20歳から3年間保険料を納付
・2006年4月に就職し、以来42年間(504月)、65歳まで、会社員として厚生年金に加入
・2023年時点のルールを適用
では、いくら受け取れるでしょうか。まずは、報酬比例の部分(2階)から計算していきます。
報酬比例部分(2階部分)
2006年4月から厚生年金に加入しているため、1月あたりの厚生年金加入中の給与(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)の平均(平均標準報酬額)から算出します。
平均年収で1200万円ですので、月額の平均では100万円となります。標準報酬月額については上限があり、2020年8月以前は62万円、2020年9月以降は65万円です。一方、標準賞与額についても、賞与1回につき150万円が上限となります。
年収1200万円もあると、標準報酬月額、標準賞与額の上限に達してしまうことにもなるでしょう。どの時期にいくら給与や賞与を受け取り、その内訳がいくらであったかによって金額も変わることにはなりますが、この標準報酬月額と標準賞与額のそれぞれの上限額、つまり標準報酬月額は62万円あるいは65万円、標準賞与額は夏冬の賞与150万円ずつの年間300万円とした場合で算出してみます。
ただし、平均標準報酬額は加入年度ごとの再評価率によって、それより少ない報酬として再評価されます。その再評価後の平均標準報酬額に一定の乗率や厚生年金加入月数をかけるなど、所定の計算をすると、報酬比例部分の額は235万円程度/年と算出されます。
この報酬比例部分に老齢基礎年金と経過的加算額が加わります。
基礎年金(1階部分)
保険料納付済期間が20歳から60歳までの40年ある(厚生年金に加入していた期間は基礎年金の計算に含まれます)ことから老齢基礎年金が満額(2023年度の67歳以下の額で79万5000円/年)となります。
経過的加算
20歳以上60歳未満の厚生年金加入期間は23歳から60歳までの37年(444月)のため、その後、63歳まで合計40年になるまで厚生年金に加入することで経過的加算額も増えます。6万円弱/年支給されます。
結果、老齢基礎年金と経過的加算額は合計85万円程度/年になります。
235万円と85万円の合計で約320万円の年金額になると言えます。つまり、月27万円弱の公的年金収入となります。
年収1200万円の人の年金は年収600万円の人の倍にはならない!?
平均で1200万円の年収という人はごく少数の超富裕層で、現実には非常に少ないと言えます。ただし、年収の内訳によっては年金額も変わります。もし、同じ年収1200万円でも年俸制で賞与が全くない場合は、賞与から保険料が発生しない代わりに、標準報酬月額(月給)が62万円(年間744万円。※2020年8月まで)あるいは65万円(年間780万円。※2020年9月以降)のみで年金が計算されることになりますので、年金額は年収約750万円の人と同じく約254万円程度となります。
ところで、平均年収が1200万円の人は平均年収600万円の人の倍の年金額を受給できると思われている方もいらっしゃったかもしれませんが、今回平均年収600万円、700万円、800万円、900万円、1000万円、1200万円と計算してきて、けっして倍増にはなっていないことにお気づきでしょうか? これは年金の「所得再分配機能」と言われるものです。
これは所得格差を是正する機能であり、現役時代の収入が、そのままは年金受給に反映されないような仕組みとなっています。今回計算してきた中ですと、平均の年収が600万円の人と、1200万円の人では収入に倍の差がありますが、基礎年金が「定額」であったり、さらに報酬比例の計算のベースとなる、標準報酬月額・標準賞与額に「上限」が設けられたりすることで、年収600万円の人の受給額は1200万円の人の半分にはならず、むしろ半分よりも多くなるのです。
「ご自身の年金がいくらもらえるか?」、「 理想とする老後のために年金は足りるか否か?」が個人の老後資金準備のうえでは重要ですが、年金には「分配の装置」もあると知っていただけたら幸いです。