岸田首相が打ち出す「資産所得倍増プラン」に関する報道が耳目を集めているように、投資による資産形成に多くの人の関心が寄せられています。人生100年時代を迎えつつある日本において、これからは「預貯金がわりに投資でお金を育てる」ことは必須になると言えそうです。

とはいえ、「どんな商品を選べばいい?」「株価チャートの値動きが気になってしまう」etc. 投資にまつわる不安は多くの人について回るもの。

こうした不安に対し、これまで数千人に資産運用のアドバイスを行ってきたIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)福田 猛氏は、“買った後はほうっておけばいい”投資信託の「積み立て投資」こそが、シンプルかつ最高の投資法だと提唱します。

そんな投資信託の「積み立て投資」について、その本質や“最高”であると言える理由、そして具体的な商品選びまで、分かりやすく解説されたのが書籍『お金の不安から一生自由になれる考えない投資生活』です。

今回は同書の第3章「コロナ禍でも勝てた人の習慣」の一部を特別に公開します(全3回)。

第2回を読む

※本稿は福田 猛著『お金の不安から一生自由になれる考えない投資生活』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

「分配型」は巧妙なワナが隠されているNG商品と覚えておこう

投資信託の初心者は「毎月分配型」をすすめられることがあります。

その名の通り、「毎月いくらかの分配金を受け取ることができる商品」で、毎月キャッシュが入るのはお得なような気がします。

定年退職後のシニア世代にとって、貯金が減っていく生活は不安なものです。だから、年金にプラスして「分配型」を受け取りたいと考える気持ちもよくわかります。

しかし、分配型は買ってはいけないNG商品のひとつです。投資の世界は、「いい」と思われているものが、実はよくないという例が山ほどあるので、あちこちにワナが潜んでいると思ってください。

問題点1  元本が削られている

分配金は、必ずしも運用した利益から分配されているとは限りません。実際は運用益からではなく、元本を取り崩している商品が多いのです。

つまり、10万円投資をして、1万円の分配金を受け取ったとしたら元本が9万円になっているわけです。

QUICK資産運用研究所の2017年の調査によると、毎月分配型で純資産総額(残高)が上位10位に入るファンドのうち、運用益だけで分配金をまかなえているファンドは1本もありませんでした。これでは、資産を増やすどころか、減らすために投資をするようなものです。

問題点2  資産の増え方に差が出る

結論から言えば、毎月分配型は、「複利運用効果」が得られません。

たとえば、利回り年5%の投資信託商品に1万円を投資します。すると、1年後には1万500円になります。最初にこの投資を「再投資型」と設定しておけば、翌年は「1万500円」を新たな元本にした運用ができます。すると〝利息が利息を呼ぶ〟と言われる複利効果が生まれます。

けれど毎月分配型(あるいは「受取型」の設定)は、「1万500円」から数百円を分配に回します。すると、複利効果が得られないどころか、元本が減っていくことすらあるわけです。これでは、ほったらかし資産運用は夢のまた夢でしょう。

「元本が削られても良い。一定額を取り崩しながら運用したいんだ」

こういう意向の人は、何も毎月分配型の投資信託を選ぶ必要はありません。

楽天証券等では投資信託を購入した後、「取り崩し設定」ができます。自分自身が必要な金額を取り崩しながら運用できるのです。人によっていくら受け取りたいかは異なりますので、運用会社に「分配金」を機械的に決められるのではなく、「毎月1万円を取り崩そう」などと自分で決めるほうがよいでしょう。良い投資信託を購入し、取り崩し設定をしたほうが、毎月分配型を購入するよりもおすすめです。

こういう問題点を事前に知っておけば、分配型を選ぶ人はほとんどいないでしょう。

とくに長期で積み立てる場合は、分配金のない投資信託でないと、毎月投資したお金の一部が戻ってくるようなものです。だからつみたてNISAの対象の商品には分配型は含まれていません。