秋以降、にわかに2つの公的年金改革案が耳目を集めている。

2つの改革案とは…

①基礎年金と厚生年金の給付を抑制する期間を一致させる(以降、「マクロ経済スライド※1調整期間の一致」と表記)

②国民年金保険料の納付期間を現行の40年から45年に延長する(以降、「国民年金納付の5年延長」と表記)

というもの。

週刊誌やネットメディアを中心にネガティブな取り上げ方をされたことで、一時“炎上”とも言える様相も呈した。そうした情報に触れて、「年金財政はやっぱり危ないのでは?」と動揺した人も少なくないだろう。そこで、ニッセイ基礎研究所の上席研究員中嶋邦夫氏にこれらの改革案はなぜ必要なのかを聞いた。

ニッセイ基礎研究所
年金総合リサーチセンター公的年金調査室長・上席研究員
中嶋 邦夫(なかしま・くにお)氏

 

2002年よりニッセイ基礎研究所。博士(経済学)。専門分野は、公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動。セミナーや各種メディアで分かりやすく年金制度を解説するとともに、改革案の提言・試算を行っている。

 

※1 「マクロ経済スライド」とは? を2004年年金改革とともに解説
2004年の年金改革で、現役世代の負担を一定水準までで打ち止め、同時にその額をベースに高齢者への給付額を決める方式が採用された。それ以前は先に高齢者への給付額ありきで、そこから現役世代の負担額を計算していた。つまり、少子高齢化の一途をたどる日本において現役世代の負担上昇を食い止めるため、主従を逆転させたわけである。

マクロ経済スライドとは、この改革の際、高齢者への年金給付額を抑える(=目減りさせる)ために取り入れられた計算システムのこと。「年金財政が健全化するまで」続けるとされている。

最近の試算によると、厚生年金が 2025 年度でマクロ経済スライド調整期間を終えられそうなのに対し、基礎年金は 2047 年度までかかると見込まれている。このことは、基礎年金のほうが大きく目減りすることを意味する。