お金に困らなくなる2つの方法
「お金はありがとうのしるし」「利益は問題解決の対価」という、「お金の本質」を考えたとき、お金に困らない2つの方法が論理的に導かれます。
①自己投資:顧客・社会が抱えた問題を発見・解決できるビジネスパーソンになり、自分が働く。
→顧客の問題を発見・解決できる人材は、組織内外で高い評価を受けるので、組織の中で重宝され昇格・昇進します。転職するのも簡単。このような人材になるためには、顧客や取引先企業の事業(ビジネス)の経済性を読み解くとともに、それを解決するスキルが不可欠です。このような問題解決型人材になるべく自分に投資することが「自己投資」です。
②長期株式投資:顧客・社会が抱えた問題を発見・解決できる企業のオーナーになり、その企業に働いてもらう。
→こういった企業は、非常に高い事業の経済性に支えられ、持続的に高収益を上げます。もちろん、こうした素晴らしい企業で「ビジネスパーソンとして働く」のは素晴らしいことですが、誰もがそこに就職できるわけではありません。そこで私は誰でもできる方法として、「オーナーになること」をお勧めします。そのような高収益企業を見つけることができるのであれば、株主としてその素晴らしい事業の経済性に働いてもらった方が効率的である場合が多いと思います。これが、私がファンドマネージャーとして実践している「長期株式投資」です。
もうお気づきかもしれませんが、この2つには共通するスキルセットが必要です。どちらの場合でも、「顧客・社会が抱えた問題を発見・解決するポジショニング」を見極める必要があるのです。これを見極める土台になる考え方を「インベスターシンキング」として詳述するのがこの本の目的です。
第2章では、インベスターの思考行動特性に触れながら、インベスターが見ている世界観を提示します。また、経済性に優れた事業を営む実際の企業を例に、企業経営にもインベスターシンキングが使われていることを示していきます。
第3章、第4章では、具体的なケーススタディも交えながら、インベスターシンキングを用いて事業の経済性を見極めていくプロセスを紹介します。どうしたらこの思考行動特性を身につけられるのか、も詳述しています。
その上で、この「自己投資」と「長期株式投資」をどのようにバランスを取っていくのが良いのかは第5章「ジブン・ポートフォリオ」において詳述します。一言で言うなら、若いうちは圧倒的に「自己投資」に比重をかけ、「長期株式投資」はひたすらフローの中からコツコツと積立てしていくということになります。若いうちは将来得られる「生涯収入」のほうが、現在保有する「金融資産」よりも圧倒的に大きいのです。この生涯収入を大きくするような投資のほうが効率的と考えます。
若いうちに身に付けた「自分で稼ぐ力」は、インフレになっても目減りしませんし、不況で勤め先が倒産したとしても奪われることはありません。経済環境の変化に対する耐性も金融資産よりも強いのです。
そしてなんといっても人間が生きる目的はお金ではありません。お金は大事ではありますが、お金そのものが人生を豊かにしてくれるわけではありません。生きていく上で水は必要ですが、水のために生きているわけではないのと同じです。お金は単なる記号でしかありません。それでもお金が尊いのは、お金の向こうに人の感謝があるからです。先述のとおり、お金の本質は「ありがとうのしるし」です。人や社会とのつながり、人や社会に対する価値提供があってこそお金は持続的に増大するのです。
私は、このつながりへの洞察やリスペクトなしに、画面の前に座ってトレーディングをしているだけでお金が増えていくことは基本的にはないと考えています。仮に増えたとしてもそれはまぐれの類です。豊かな満足を与えてくれるものではないと思っています。
問題解決するには顧客にとっての付加価値を特定し、問題解決者として競争優位性を持つことが必要です。要はそういう「ポジショニング」を取れるかどうかがポイントです。
さぁ、インベスターシンキングの世界に入っていきましょう。
ビジネスエリートになるための投資家の思考法
奥野一成 著
発行 ダイヤモンド社
定価 1500円+税