長期拡大の米国景気は3年間隔で小サイクルが発生

2009年以降、米国では景気拡大が10年間にわたって継続し、株式市場もそのことを反映して右肩上がりを描いてきました。もっとも、ミクロの視点から凝視してみると、こうした長期的な景気拡大の潮流の中にはほぼ3年の間隔で訪れる小さな波を観測できます。

たとえば、2015年の初めにピークをつけて2016年の半ばに底を打った波がその1つ。そして、2018年の初めに再びピークをつけてから2019年の半ばに底を打ったのが次の波です。

2020年は中国武漢発の新型コロナウイルスのパンデミック(大流行)によって、世界的に経済活動が麻痺しました。2019年に底入れした景気が底割れしたのです。しかし、米国政府やFRB(連邦準備制度理事会)を筆頭に各国が未曾有の規模の対策を講じたため、私はその年の11月の時点で「2021年は世界経済回復年になる」と主張しました。

当時はまだ、ファイザー社やモデルナ社のワクチンの普及に関しても明確な見通しが立っていませんでした。根拠として掲げたのは、①コロナ感染の沈静化、②堆積した欲望と貯蓄(ペントアップディマンド)、③世界的な財政・金融支援、④イノベーションの加速(ネット・デジタル、新エネルギー、脱中国)といった4つの要因です。

このうち、②は「繰越需要」とも呼ばれます。「景気の先行きが不透明になって購買行動を一時的に控えていた」消費者の需要が、景気回復とともに一気に顕在化することです。一方、④についてはDX(デジタルトランスフォーメーション)やカーボンニュートラルといったキーワードを頻繁に目にする通り、まさに目の前で進んでいることを実感できるでしょう。

実際、経済活動の再開とともに米国の景気回復は鮮明になりました。コロナ対策のサポートがなくなれば低迷するとの悲観説も一部では囁かれていましたが、米国経済の見通しは明るく、失速は考えがたいというのが私の見解でした。

確かに家計給付金効果の一巡が予想されるなどのマイナスはあるものの、 コロナ終息を待つ②のペントアップディマンドは相当な規模だと考えたからです。コロナのパンデミックという突発事態が発生しましたが、ほぼ3年の間隔で景気循環の小さな波は続いていると考えられます。2021年、2022年は拡大局面です。事態が変化するとすれば、2023年でしょう。