なぜ総理大臣を国民が決めないの?
アメリカでは4年に1度大統領選挙があり、次は2024年11月に行われます。国民が直接国のリーダーを決める姿を見ると、「なぜ日本では国の代表を国民が決めないのか」と疑問を抱く人もいるかもしれません。
しかし、間接的にではありますが、総理大臣も国民が選んでいます。総理大臣とは、日本が採用する「議院内閣制」における行政府(=内閣)の長で、国会議員によって選ばれます。その国会議員は国民が選ぶため、総理大臣は間接的に国民が選んでいるのです。
現実的には与党の代表(党首)が選ばれるケースが多いため、党内の代表(党首)選挙が総理大臣を選ぶ場といえるかもしれません。自民党の場合、党首は「総裁」といい、国会議員と全国の党員が票を投じて決めています。従って総裁選挙においても多くの国民が関わっており、総理大臣を国民が選んでいないというわけではありません。
一方、アメリカにおける行政府の長は大統領であり、これを「大統領制」といいます。厳密にいうと、アメリカ国民が直接決めるのは「選挙人」であり、大統領は選挙人による投票で選ばれます。この点ではアメリカ大統領も間接選挙で選ばれるといえますが、選挙人が有権者の意に反して「造反」することは最高裁が認めていません。従って、大統領は国民が直接的に選んでいるといえるのです。
日本の総理大臣とアメリカ大統領の大きな違いは議会への責任です。日本の総理大臣と国会は、それぞれ解散権と不信任案の提出権があり、互いにけん制し合っています。しかしアメリカの場合、議会に大統領を罷免する権利は原則なく、また大統領は議会を解散することはできません。
また、法案の提出権も異なります。日本の総理大臣は同時に国会議員でもあり、法案の提出や審議に参加できます。しかしアメリカ大統領の場合、法案の勧告や拒否権を持ちますが、自ら法案を提出することはできません。
このように、日本の総理大臣は議会により近い存在であり、アメリカ大統領はより独立した存在といえます。アメリカ大統領が強い権限を持つといわれる背景には、このような事情があるでしょう。
参考:衆議院 主要国の政治行政機構-議院内閣制に関する参考資料
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。