お金や家計の問題の専門家であるファイナンシャルプランナー(FP)の元には、さまざまな相談が寄せられます。特に「相続」に関わるトラブルは、単にお金だけの問題ではなく、かかわる人たちの感情がもつれ合うことで事態が複雑にこじれてしまっているケースも多く見られます。

今回登場する宮本佳代さん(42歳、仮名)も、その典型的なパターンでした。宮本さんが直面したトラブルをご紹介したのち、後編ではマネーセラピスト安田まゆみさんが宮本さんに送ったアドバイスを解説します。

※本記事で紹介されている事例は、個人が特定されないよう一部変更・再構成しています。

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相談者・宮本佳代さんプロフィール(相談時)
都内在住
42歳・女性
会社員
夫を亡くし、夫と共有のマンションで一人暮らし

夫、健司と結婚したのは私が37歳のときでした。

結婚当初は義実家との関係も良好で、よく夫の実家に顔を出していました。しかし、健司は1人っ子だったこともあり、義母は孫を熱望していました。しばらくたっても、子どもに恵まれない私にやきもきした義母が次第にプレッシャーをかけてくるようになったのです。

「佳代さんはキャリアウーマンだからお仕事を頑張りたいのは分かるけど……」。

どうやら、私が仕事を優先して、妊娠を避けていると思い込んでいるようでした。電話のみならず、メッセージアプリで私を追い込むようなメッセージを送ってくるようになるなど、日に日にプレッシャーはエスカレートしていきました。精神的に追い詰められた私は、義母をブロックし連絡を絶つことにしました。健司も「それでいい。実家に行くのもやめよう」と言ってくれたのが救いでした。

私たち夫婦は、2人だけの人生を考えようと話し合うようになりました。住んでいいた賃貸の家賃が高かったこともあり、2人でマンションを買おうという話が持ち上がり、情報収集を続けるうちに、通勤にもちょうど良い、手ごろな中古マンションを見つけました。その物件を気に入り、購入を決めて健司の名義でローンを組みました。頭金は2人で出し合って500万円用意し、4000万円のローンを返済していくことに(マンションの登記は、夫8:相談者 2での共有名義)。終の棲家を得たことで、やっと心の平穏を取り戻せた気がしました。