円安が止まらない。4月28日、東京外国為替市場で一時1ドル=130円台を突破するなど約20年ぶりの円安・ドル高水準となった。急激に円安が広がり、日本円の価値が低下。通貨としての円の魅力が失われている。

21年度は5兆円超の貿易赤字

20日に発表された2021年度の貿易統計では、輸出額から輸入額を差し引いた額は、5兆3749億円の赤字だった。資源価格の高騰による輸入額が大幅に増え、2年ぶりの赤字となった。同じく20日に発表された3月単月での貿易収支は4124億円の赤字で、8カ月連続で赤字だった。直近の統計では特にロシア向けの輸出額は前年同期比で3割減の約500億円となる大幅マイナスでロシアへの経済制裁への影響とも見られる。収束をみせない新型コロナウイルス感染症に加えウクライナ情勢に伴う地政学的リスク、止まらない円安進行、貿易赤字など日本経済の先行きには不透明感が漂う。

日本の産業の中核をなす製造業だが、円安進行によって日本経済や産業に与える影響はどうなるのか。円安のメリットとデメリットを解説しながら貿易統計の具体的な数字を読み解きたい。

まず円安のメリットを挙げれば、日本企業の中でも輸出関連企業にとって円安進行は追い風になる。特に電機メーカーや機械メーカーなどを中心に、業績の上振れ要因につながりやすい。今回の貿易統計ではどうか。2021年度の輸出額は、23.6%増の85兆8786億円だった。鉄鋼価格が62.7%増、自動車が12.8%増、半導体等製造装置が33.9%増だった。

地域別でみるとそれぞれの産業の特徴が際立つ。米国向けの輸出額は前年同期比23.9%増の15兆4174億円で3年ぶりに増加した。自動車部品などが輸出額を押し上げた格好だ。自動車向け部品が前年同期比で34.7%伸びた。原動機は前年同期比35.3%増、半導体等製造装置は前年同期比60.8%増だった。輸入額は前年同期比28.3%増の9兆4860億円で3年ぶりに増加した。医薬品や液化石油ガス、穀物類の価格の上昇が目立った。輸出額から輸入額を差し引いた額は前年同期比17.5%増の5兆9313億円で14年連続の黒字となった。

EU向けでは、鉄鋼や科学光学機器、建設用・鉱山用機械が輸出額を押し上げ、前年同期比24.5%増の7兆9258億円となり、3年ぶりに増加した。輸入額は前年同期比26.2%増の9兆9417億円で3年ぶりの増加。輸出額から輸入額を差し引いた額は2兆159億円で10年連続で赤字となった。