日米でこんなにも違う個人金融資産の考えとその資産総額
可能性としては低いと思われますが、たとえばコロナショック級の暴落が起ったとしたら、どうでしょうか。コロナショックで日経平均株価は、直前高値から大底まで32%も下げました。2021年9月末時点で個人が保有している株式の残高が218兆円ですから、同じ率で下げると、株式の残高は約70兆円も減ることになります。加えて投資信託の評価損も発生しますから、両者をあわせると、個人金融資産にとってはかなりのネガティブインパクトです。
ここで言いたいのは、そうなるかどうかということではありません。その程度に、株価が個人金融資産に及ぼす影響は大きいということです。
日米の個人金融資産の増え方を比較してみましょう。数字は2017年末から2021年の第2四半期(6月末)までのものです。日本の個人金融資産総額は、2017年末が1860兆9217億円で、2021年6月末が1991兆6191億円でした。この間の増加率は7.02%です。
これに対して、同じ期間の米国の個人金融資産を見ると、2017年末が84兆3365億ドルで、2021年6月末が113兆1494億ドルでした。増加率は実に34.16%にもなります。増加率でみると、米国のそれは日本の約5倍にもなります。
なぜこれだけの差が生じるのでしょうか。
答えは明確で、株価上昇による影響です。米国の代表的な株価インデックスであるS&P500の2017年末は2673.61ポイントで、2021年6月末が4297.50ポイントでした。この間の上昇率は60.73%です。これに対してTOPIXは、2017年末が1817.56ポイントで、2021年6月末が1943.57ポイントですから、上昇率はわずかに6.93%でした。
しかも、米国の個人金融資産の内訳をみると、ご存じの方も多いとは思いますが、日本に比べて株式と投資信託の比率が高くなっています。2021年6月末で比較すると、株式と投資信託を合わせた比率は、日本が15%であるのに対して、米国は37.8%です。より多くの個人マネーが株式や投資信託で運用され、かつ株価が日本とは比べ物にならないくらい上昇しているのですから、個人金融資産が大きく増えるのは当然といっても良いでしょう。
とはいえ、日本に希望が全くないわけではありません。現預金比率が高いということは、そこから株式や投資信託などのリスク資産に資金がシフトした場合、株価に大きなインパクトを与える可能性があります。
前述したように、つみたてNISAの口座数が20代から40代の資産形成層で増えています。その資金が日本の株式市場に流入すれば、株価を押し上げ、個人金融資産の増加にもつながります。
だからこそ「貯蓄から資産形成へ」という掛け声とともに、NISAやiDeCoなど投資の優遇税制が設けられ、現預金から株式、あるいは投資信託といったリスク性資産への資金シフトを促すための政策が打ち出されているのです。