投信販売会社による投信運用会社の評価である「運用会社ブランドインテグレーション調査(以下、BI調査)」の回答内容をブレイクダウンしてみていくと、個々の運用会社の強みや業態による運用会社の評価の違いなどが見えてくる。販売会社を「地方銀行」「第二地銀」「証券会社」に区分し、さらに、「本部」と「支店」、また、「営業部門」と「商品開発・企画部門」の違いによる特徴をみてみた。
営業の現場からの厳しい評価
2024年のBI調査で総合トップになった日興アセットマネジメントだが、調査対象を支店に勤務している人に絞ると第4位にまで順位を下げ、「営業部門」の担当者だけの回答では第5位になってしまう。この調査は、国内系と外資系を合わせて国内に拠点を持つ49社の運用会社を対象としているため、トップ10に入ることそのものが価値のあることではあるが、それでも総合トップでありながら、特定のグループの中では第5位にまで順位を下げてしまうというのは興味深い。しかも、評価が低いのは「支店」や「営業部門」という顧客(投資家)に直接接している部門だ。
「支店」や「営業部門」の回答をみると、「運用力」の項目でともに第8位という低い評価になり、「商品開発力・企画力」の評価が「支店」では第8位、「営業部門」では第4位という結果だった。「運用力」や「商品開発力・企画力」という運用商品に関係する項目は、顧客との接点だけに営業部門には非常に大きな影響がある。そこで思い起こされるのは、日興アセットマネジメントが米ARK社と組んで提供しているファンドが2022年に大崩れした経験だ。「破壊的イノベーション」をテーマに高成長株を独自の分析で発掘することに強みのあるARK社が実質的な運用を担うハイテク株ファンドの数々は、2021年半ばまでは快調に上昇していたのだが、2022年に一気に崩れた。「グローバル・プロスペクティブ・ファンド」は2021年2月高値3万438円が2022年12月には7785円に下落。「グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンド」は2021年4月に設定されたばかりで2021年11月の高値1万597円が2022年12月に4067円に下落した。この急激なファンドの運用悪化は、そのファンドを購入した顧客フォローで販売員に負荷がかかったことは間違いない。
幸いにして日興アセットマネジメントの「サポート力」に対する評価は「支店」「営業部門」ともにトップだ。「営業担当者・研修担当者の質」に対する評価も高い。ARK社関連のファンドが急落するさなかにあっても、日興アセットマネジメントの担当者は販売会社に対して運用状況の情報提供などを賢明に続けていたと想像される。また、ファンドの基準価額も2022年を底にして出直ってきている。依然として高値を奪回するまでには戻っていないために、「運用力」等の評価は厳しいままにあると考えられる。
業態別の評価の特徴は?
「地方銀行」「第二地銀」「証券会社」で回答内容を比較すると、「地方銀行」では評価する運用会社が比較的固まっていることに対し、「第二地銀」と「証券会社」では評価する運用会社が広がっている。「地方銀行」が選ぶトップ10に入っていないような運用会社が「第二地銀」や「証券会社」では評価されている。
「地方銀行」が評価する運用会社トップ10は、総合的なランキングでトップ10を占める運用会社10社と同じだ。これは「販売会社一般編」において地方銀行が占める比率の高さなど、本結果には地方銀行の評価が大きく影響していることの証左の1つでもある。「地方銀行」が選ぶトップ10に入っていない運用会社でインベスコ・アセット・マネジメントは「証券会社」は第3位、キャピタル・インターナショナルは第4位という上位に評価している。「第二地銀」では「地方銀行」のトップ10には入らなかったインベスコ・アセット・マネジメント、三井住友DSアセットマネジメント、あおぞら投信をトップ10に入れている。
この「地方銀行」と「第二地銀」「証券会社」の評価の違いは、「地方銀行」の評価には、「サポート力」や「営業担当者・研修担当者の質」といった運用会社の総合力を評価する傾向があることに対し、「第二地銀」や「証券会社」では「運用力」など特定の強みがあれば、その強みを積極的に評価しているようだ。たとえば、インベスコ・アセット・マネジメントは「サポート力」の項目で「第二地銀」も「証券会社」もトップ10入りの評価をしていない。それでも「運用力」で「証券会社」はインベスコをトップに評価し、「第二地銀」も第3位と高く評価している。インベスコ・アセット・マネジメントには「インベスコ世界厳選株式オープン(ヘッジなし・毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」という残高1兆8000億円を超える売れ筋のアクティブファンドがある。その安定的な運用成績が同社の評価を支えていると考えられる。
「本部」と「支店」の評価は?
「地方銀行」と「第二地銀」「証券会社」の間にあった評価のポイントの違いは、「本部」と「支店」の間での評価の違いに似通っている。たとえば、インベスコ・アセット・マネジメントの評価は「支店」では第7位だったが、「本部」ではトップ10以内に評価していない。また、アライアンス・バーンスタインも「支店」では第6位に評価しているが、「本部」ではトップ10以下の評価だ。いうまでもなく「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信D毎月決算型」は約3兆5000億円もの残高がある巨大ファンドだ。「支店」という営業の最前線では、顧客に求められる商品を提供してくれる運用会社こそが高い評価の対象となるということだろう。
アライアンス・バーンスタインやインベスコ・アセット・マネジメントは「本部」が「サポート力」をトップ10以下にしか評価していない。それでも「支店」では、「営業担当者・研修担当者の質」の項目でアライアンス・バーンスタインとインベスコ・アセット・マネジメントを第6位に評価している。「本部」がトップ10以下にしか評価しなくても、販売の現場にいる自分たちが必要とする運用情報を届けてくれる存在として売れ筋ファンドを持っている運用会社の担当者は「支店」から高く評価される存在なのだろう。
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