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インタビュー・投資信託協会・松下浩一会長が語る、製-販連携強化への道筋

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.10.02
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インタビュー・投資信託協会・松下浩一会長が語る、製-販連携強化への道筋

NISA制度拡充によって投資信託の裾野拡大が進む中、金融庁はこのほど「顧客本位の業務運営に関する原則」(FD原則)の改定案を公表。顧客情報を製-販で連携するよう業界側に促す方針を示しましたが、具体策については現時点で見通しきれないところがあります。投信業界が変化の時期を迎える中、資産運用ビジネスの健全な発展に向けどのように議論を進めていくのか。日本投資顧問業協会との統合に向けた取り組みを含め、投資信託協会の松下浩一会長に話を聞きました。

 

――金融審議会の市場制度ワーキンググループが取りまとめた報告書でFD原則改定案が提示されました。プロダクトガバナンスの観点から、商品を購入した顧客の情報を製-販間で連携するよう促す内容ですが、協会としてどのように対応していく考えですか。

「FD原則に追加される補充原則が指し示す方針について、資産運用業界としていかにして実効性を確保するかが重要です。この点については、我々投信協が事務局を務め、販売サイドを含めた検討会を設置しました。すでに7月末に初会合を開きましたが、今後の議論については(1)情報連携の範囲、(2)連携の中身、そして(3)方法論――という3つのポイントに収斂していくとみています」

「まず議論全体の前提となるのが具体的な情報連携の範囲であり、この点について優先的に意見調整を進めるべきだと考えています。たとえばインデックス運用の商品よりはアクティブ色の強い商品が情報連携の対象となることが予想されます。もっぱら機関投資家向けに提供しているような商品は除外され、反対に、一般の投資家が多く参画している商品が対象になるのではないかと思っています」

 

――連携対象の商品を絞ったあと、どのような議論の流れが予想されるでしょうか。

「情報連携の範囲については比較的、早期に結論に至る可能性がありますが、連携する情報の中身については、おそらく多種多様な意見が寄せられることになるでしょう。仮に同じ雛型をベースに検討を進めるにしても、立場によって『そこまで情報連携が実現すれば十分』といった意見や、あるいは反対に『対応が過剰ではないか』というような声が上がるかもしれません」

「システム整備を含む方法論の問題についても、場合によってはコストアップの要因にもなりうることから、意見集約は決して容易ではないでしょう。現行の重要情報シートと同じように共通フォーマットのようなものを用意し、あらかじめ定められた様式に沿って情報をやり取りすべきだという意見が上がる一方、様式を定型化することでかえって形骸化するのではないかといった懸念の声が上がる可能性もあります」

 

――販売チャネルや規模によって考え方が異なることも予想される中、具体的な現実解への落とし込みに向けてどのような方法で検討を進めていくのですか。

「検討会自体は全部で5回程度の会合を開き、遅くとも年度内、可能であれば年内までに報告書を取りまとめる予定です。7月末の初会合に参加していただいた販売サイドの方々には、情報連携の方向性について見解を尋ねるアンケート調査を実施しました。加えて組成サイドにも別途アンケートを実施し、双方の意見を集約しながら丁寧に議論を進めていけたらと考えています。そのうえで先ほど挙げた3つの論点については、あらゆる物事を全員で議論するのではなく、たとえば連携範囲の問題については組成サイドと関係性が強い論点なので投信会社を中心としたスモールミーティングを開催するなど、臨機応変に対応する方針です」

 

――24年1月にNISA拡充が実現し、3四半期近くが経過しようとしています。制度改正の影響をどのように評価していますか。

「NISA制度そのものがスタートした10年前(2014年)や、つみたてNISA制度が始まった2018年の資金流入の仕方と現在の状況とを比べると、興味深いことがわかります。14年、18年の制度改正直後のタイミングには集中的な資金流入が生じ、その後、勢いが減退していく流れがみられました」

「たしかに今回の制度拡充においてもある程度までは過去2回と同様で、1月、2月に資金流入が歴史的水準に達した後、3月以降は比較的緩やかになっています。とはいえ、1月から8月まで1兆円を超える資金が流入を継続し、8月5日の東京市場暴落の当日も流入超の傾向を維持したところをみると、長期・分散・積立の考え方は足元でいっそう浸透してきていることが見て取れます。実際に投信の保有平均保有年数を見てみると、2018年ごろまでは3年程度でしたが、ここ数年で伸長し、足元で4年超ぐらいまで伸びているのです」

 

――今年発表した日本投資顧問業協会との統合についてのご見解と、新協会稼働に向けた検討状況を教えてください。

「政府から両協会の統合に向けたサジェスチョンを受けた背景には、資産運用業への注目の高まりがあると感じています。以前から業界内には、金融業界を構成する銀行や証券会社といった他の主要な業態に比べ、資産運用業界は比較的歴史が浅いこともあり、世間の是認を十分に受けていないのではないかという問題意識が存在しました。政府が資産運用立国という方針を打ち出し、金融庁も組織改編を通じたモニタリング体制の見直しによって資産運用業を金融の『第3の柱』として重視する考えを明確にしました。NISA拡充を背景に業界全体の運用規模の拡大基調が続く中で、資産運用業への期待と関心の高まりが業界の存在感向上につながりつつあることを実感しています」

「新しい協会の設立に向けては、定期的に協議を重ねているところです。再来年(2026年)4月をめどに稼働を開始するためには、来年(25年)半頃には双方の理事会で正式に決定をする必要があります。場所や名称など細かい事項を含め、実質的にはこの1年くらいで調整を進めなければと考えています」

 

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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