製-販の力関係も話題に
従来のFD原則に追加されることになる「補充原則」は、金融商品の組成会社に対し、商品を購入すると想定される顧客属性の特定や商品性の事後的な検証などについて態勢整備と対応強化を促す内容となっています。
さらに補充原則とは別に、既存の「原則6」に注釈を追加し、販売会社側に対しても、実際に購入した顧客の情報について組成会社と情報連携するよう促しています。改定案は近く、正式確定する見込みです。
ある有識者委員は「組成会社に求められる対応の方が(見かけの)数としては多いものの、実際にはやはり原則6の注が非常に重要なんだろうと思う」と発言。「これまで販売会社と組成会社の関係をみると、販売会社が若干優位な状況にあり、その中で顧客本位の観点から金融商品の組成が行われなかった実態があったのだろう。組成会社がプロダクトガバナンスに関する態勢を整備するためには、販売会社に依存しなければいけない部分もある」と述べました。
別の委員は金融庁が担う役割の大きさを指摘。「プリンシプルをもとに顧客を見て(態勢や対応を)変えていくということだろうが、実際には金融庁にお伺いを立てながら進めていくところも多い。それが悪いということではないが、それだけに(当局の)判断が非常に大きな影響を与えることになるので、引き続きモニタリングや方向性をお示しになるということをお願いしたい」と要求しました。
FD原則の「ブレークダウン」は実現するか
FD原則改定の議論は、基本的に投資信託の分野での対応を念頭に置いて進められてきましたが、市場制度ワーキンググループの会合では、他の金融商品についても対象を広げるべきだとの声がありました。
この日の総会で、別の委員は「例えば保険会社もFD原則が適用されるが、保険商品は資産運用のための商品とは異なる面もある」と指摘。顧客本位の業務は重要であることは当然として、原則の適用についてはプリンシプルベースを基本としながらも、業界ごとにそれぞれに適合した原則を定めていくことも検討に値する」と述べました。
また、金融審会長の神田秀樹東大名誉教授は、「昨年改正の金融サービス提供法によれば、金商法の中にあった誠実公正義務を、金融サービス提供事業者を含め年金関係者にも拡大した」とし、「2017年にFD原則を作ったときは、その時点における金融事業者に向けて横断的に作ったが、今回はプロダクトガバナンスの観点から補充原則を作った。そういう意味で、原則の重層化というのはおそらく今後、必要になってくる」と主張しました。
金融審総会では他にも、鈴木俊一金融担当相からの諮問を受け、保険市場の信頼確保、資金決済制度の在り方見直しに向け、それぞれ新たなワーキンググループを設置することが決まりました。
保険関連のワーキンググループ(仮称「損害保険業等に関する制度等WG」)は、大規模乗合代理店に対する規制強化、保険仲立人の活用促進などに向けた制度整備の検討を進めます。座長は市場制度ワーキンググループ委員も務めた森下哲朗上智大教授が務めます。資金決済制度に関するワーキンググループは、ステーブルコインなどweb3分野の環境整備に向けた制度整備の検討を行います。座長は金融審総会座長の神田氏が務めます。