finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

特別インタビュー 中島淳一・前金融庁長官【前編】
新NISAは「80点」 資産所得倍増プラン決定への道程

finasee Pro 編集部
finasee Pro 編集部
2024.05.22
会員限定
特別インタビュー 中島淳一・前金融庁長官【前編】<br />新NISAは「80点」 資産所得倍増プラン決定への道程

資産所得倍増プランや新NISAがスタートし、日本でも「貯蓄から投資へ」の大変革が起きつつある。その立役者のひとりが、2021年7月から23年7月まで金融庁長官を務めた中島淳一氏(現KPMGジャパン シニアアドバイザー)だ。 画期的な新NISAが世に出るまでに、果たしてどのような生々しい政策論議があったのか。個人の資産形成と日本経済の成長との好循環を生むために、国内の販売会社や運用会社には何が求められているのか。 制度誕生に注力した中島氏に話を伺った。               (インタビュ/ 金融ジャーナリスト 浪川攻)

―― 1月から新NISAがスタートしました。中島さんから見て、新しいNISA制度の滑り出しは何点ですか。

合格点が70点だとすると、まずは、80点ぐらいだと思います。メディアの報道も盛り上がっており、いいスタートが切れていると感じます。

長らく金融行政に携わってきた身からすると、日本ではほんの十数年前まで、株に投資しても成功しにくい時代が続いていました。ところが最近の若い世代はアベノミクス以降の株高の恩恵を享受しやすい環境で育ってきたため、株式投資への抵抗感が薄いように見えます。そして新NISAが始まり、投資の熱気が若年層からそれ以外の層へと広がってきていますね。

残りの20点はと言うと、この先、長期的に地道にやっていくことで点数を獲得していくものだと思います。でも80点がずっと続いていく方が良いかもしれませんね。

 ―― いわばアベノミクスからの株高基調の上に、岸田文雄内閣によるNISA改革がのってきたと。

私が金融庁長官に就いて3カ月後、岸田内閣が発足しました。ついこの前のことなのに忘れられていますが、岸田氏は自民党総裁選で金融所得課税の強化を掲げていました。投資関連の税制でみれば、むしろNISA拡充とは正反対の方向を向いていました。われわれとしては政権発足後に与党税調が増税の具体案を出してくるのではないかと危惧していたのです。しかし、金融所得課税については首相が就任早々に打ち消していただいて安心しました。

NISA拡充の議論が始まったのは22 年の春以降です。6月に公表する「骨太の方針」に向けて官邸とやりとりする中でNISAの改革が論点に上っていたものの、4月時点では全く具体化していませんでした。すると首相が5月のゴールデン・ウイークにロンドンのシティで講演した際に「資産所得倍増プラン」を大々的に打ち出し、NISA を抜本的に拡充すると宣言したのです。金融庁としては寝耳に水の部分もあり ましたが、大きなチャンスでもありました。せっかくの首相のイニシアチブ を生かして、金融庁を挙げて良い制度を作ろうという雰囲気に包まれました。

われわれの根底には「分かりやすい制度にしたい」との強い思いがありました。従来だと「一般」「ジュニア」「つみたて」の3つのNISAが併存し、しかもそれぞれ期限つきで限度額もバラバラでした。こういう複雑さを一挙に解消して格段に使いやすくするまたとない機会だと考えました。

非課税期間の恒久化は当然である一方で、非課税枠の具体的な金額の線引きについては、金融庁から官邸側に案としては示しませんでした。税制の決定は与党税調の権限が大きいので、われわれが先に掲げた数字がひとり歩きして議論があらぬ方向へ向かうのを避けるため、あえて言及を控えたのです。

旧つみたてNISAの非課税限度枠は800万円ですから、官邸が「資産所 得倍増」を掲げた以上、新NISAの生涯投資枠も2倍の1600万円程度になる のが自然だと内心では思っていました。それがなんと1800万円で決着したものですから、われわれも大いに驚きました。

従来の一般NISAを発展させた年間240万円の成長投資枠に関しても、金融庁として強いこだわりをもって臨みました。若い人はつみたて投資枠で中長期の安定運用に励んでいただきたいですし、ある程度の資産を持っている中高年層は成長投資枠を活用することで、まとまった預貯金を株式投資などに移す「キャッチアップ投資」ができるようになっています。

ある自民党税調の幹部は「そもそも一般NISAを非課税にする必要があるのか」と懐疑的でしたが、われわれとしては個別株を買える枠が必要であるとの意図を込めて、一般NISA改め 「成長投資枠」と命名しました。ぜひ成長投資枠で国内株を買っていただき、ひいては日本企業の成長を後押ししていただければと思います。

―― S&P500やオールカントリーといった、海外株インデックス・ファンドが人気です。軽度のキャピタル・フライトが起きているとの指摘もあります。

NISAは「長期・積立・分散投資」とうたっており、世界の成長を取り込みながら資産形成を行います。確かに投資の段階では資金が海外に出ていきますが、老後は積み上げた資産を取り崩して国内で消費するので、いずれお金は日本に戻ってくると考えられます。 そういう大きな経済活動の中で捉える必要があるのです。

―― NISA口座を1人あたり1金融機関1口座に限るのは合理的でしょうか。

確かに、つみたて投資枠の対象となる投信であれば銀行のNISA口座で買えますが、成長投資枠を使って現物株に投資しようと思っても買えません。このような不都合が生じうるとの問題意識は以前から持っています。

ですから本来であれば、1人1口座である必要はなく、非課税枠の範囲内であれば NISA口座をいくつ持ってもいいと思います。 問題は、NISA口座が複数の金融機関で利用できるようにするために、さらに限度額管理のシステム費用が必要となることでしょう。今回は時間的な制約もあり「1人1口座」でのスタートとなりました。私はもう行政の立場から離れましたが、NISAをさらに使い勝手の良い制度へと磨き上げていく不断の努力に期待します。

                              後編に続く

―― 1月から新NISAがスタートしました。中島さんから見て、新しいNISA制度の滑り出しは何点ですか。

合格点が70点だとすると、まずは、80点ぐらいだと思います。メディアの報道も盛り上がっており、いいスタートが切れていると感じます。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #NISA
  • #法律・制度
前の記事
アセットマネジメント鵜の目鷹の目 第1回 機関投資家向け運用と比較した個人投資家向け運用の「理想像」
2023.12.26
次の記事
米欧アクティブETF市場の動向と日本への示唆
【モーニングスター・ジャパン レポート 2024年5月】
2024.06.14

おすすめの記事

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
③日本の金融リテラシー向上へ、将来の資産運用を支える人材を育てる

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす

finasee Pro 編集部

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの

finasee Pro 編集部

日本初のハンセンテック指数連動ETFが東証上場―注目浴びる“中国テック株”が投資の選択肢に

Finasee編集部

10億円以上の資産家が多いのは山口県、北陸ではNISA活用が進む。県民性から読み解く日本人の投資性向とは?

Finasee編集部

著者情報

finasee Pro 編集部
ふぃなしーぷろへんしゅうぶ
「Finasee」の姉妹メディア「Finasee PRO」は、銀行や証券会社といった金融機関でリテールビジネスに携わるプロフェッショナルに向けたオンライン・コミュニティメディアです。金融行政をめぐる最新動向をはじめ、金融機関のプロフェッショナルにとって役立つ多様なコンテンツを日々配信。投資家の皆さんにも有益な記事を選りすぐり、「Finasee」にも配信中です。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【みさき透】ファイナンシャル・ウェルビーイング企業の支援で運用立国の高度化を、今夏の「新金融戦略」に向け議連で検討も
事業会社から最も評価が高い運用会社はどこか?Extel社の調査結果に見る日本市場の「360度評価」
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉚
米国株からグローバル株へ資金シフトと欧州株ファンドへの期待
【プロが解説】「アンソロピック・ショック」とは?AIがSaaSを使う側に回り、揺らぐ課金モデル
「テクノロジー×教育×アクセス向上」でプライベートアセットの民主化を――iCapitalが描くオルタナ市場拡大への道筋
広島銀行の売れ筋トップを独走する「ポラリス」と第2位を継続する「世界経済インデックスファンド」の魅力
「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」
新NISA戦略を運用会社に聞く① 日興アセット、新しい投資家の開拓のためには対面窓口での対応がカギに
SBI証券で売れ筋上位は変わらず、イラン紛争の長期化懸念でアクティブファンドにも出番
「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」
事業会社から最も評価が高い運用会社はどこか?Extel社の調査結果に見る日本市場の「360度評価」
長期金利の急上昇が話題になった日本国債発行体である財務省国債企画課は市場をどう見ているのか【前編】
足利銀行の売れ筋で大幅ランクアップをはたした「グローバルバリュー株式ファンド」の行方は?
千葉銀行の売れ筋で「分散名人」がトップに、「日本株好配当」や「グローバルREIT」も人気化
広島銀行の売れ筋トップを独走する「ポラリス」と第2位を継続する「世界経済インデックスファンド」の魅力
日本国債市場で存在感増す海外投資家 発行体である財務省国債企画課は市場をどう見ているのか【後編】
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉚
米国株からグローバル株へ資金シフトと欧州株ファンドへの期待
SBI証券で売れ筋上位は変わらず、イラン紛争の長期化懸念でアクティブファンドにも出番
「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」
【プロが解説】「アンソロピック・ショック」とは?AIがSaaSを使う側に回り、揺らぐ課金モデル
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第18回:40年ぶりの運賃区分統合実施!JR東日本の運賃改定が各セクターに及ぼす影響は?
「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」
【金融風土記】九州一の大都会はどんな様子なの?‟フルスペック”福岡県の金融動向
広島銀行の売れ筋トップを独走する「ポラリス」と第2位を継続する「世界経済インデックスファンド」の魅力
野村證券の人気ファンドは高リターンにシフト、「のむラップ・ファンド」がトップ10から消える
プライベートクレジットと解約設計の整合性を問う
「銀証連携」の強化と「支社体制」の導入でコンサルティング営業の高度化を加速 case of 東京きらぼしフィナンシャルグループ
事業会社から最も評価が高い運用会社はどこか?Extel社の調査結果に見る日本市場の「360度評価」
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
総合証券モデルの利点は残し、それ以上の価値を生む「合弁会社設立」から見えてくるグループの覚悟 case of 三井住友フィナンシャルグループ/ SMBC日興証券
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら