プロクレアHD(青森銀、みちのく銀)の取り組みを紹介
日銀出身で、フィンテック系スタートアップ企業での勤務経験もある神田潤一・内閣府大臣政務官は「革新的なビジネスを生み出すスタートアップと、事業を通じて社会課題や環境課題を解決していくインパクトの2つがつながって、社会のために役立つことが、ビジネスの評価にも繋がりうるという考え方が理解を広げつつある」と指摘しました。具体的な事例として、青森銀行、みちのく銀行を傘下にもつプロクレアHDが、地元で事業展開を図る企業を支援するために立ち上げた新ファンドについて紹介しました。
「従来、こうしたスタートアップなどの活動は東京に一極集中する傾向が強かったように思うが、解決すべき課題の多い地域から事業を創造していこうという取り組みは、政府のスタートアップ育成5ヶ年計画以降の様々な支援等の成果もあり、着実に広がってきている」と説明。「特に持続可能性という観点から言えば、生産拠点に近い地域は大きな強みを持っている。地域の中堅中小企業やスタートアップ、そしてこれを支える地域の金融機関は、まさに持続可能性を支える重要なキープレーヤーだ」と話しました。
村井英樹内閣官房副長官(新資本主義実現会議事務局長)は、「岸田政権では発足当初から、社会課題を成長のエンジンに転換する新しい資本主義を掲げ、成長と分配の好循環の実現に取り組んできた」と説明。水素製造の技術開発に取り組むスタートアップ企業などの事例を取り上げつつ、「市場の変革を促し、好循環を実現する金融の力」を含め、官民協働で多様な企業の取り組みを成長に繋げていくことが重要と強調しました。
業界団体「民間プレイヤー育成が日本の勝ち筋」
政府はスタートアップ企業へのリスクマネー供給を制度的に後押しする施策を相次いで打ち出しています。今年中には、スタートアップ企業に投資するベンチャーキャピタル向けの新たな行動規範(プリンシプル)を創設する予定です。同時並行で策定作業が進められているアセットオーナー向けプリンシプルと両輪で、国内外の機関投資家からスタートアップ領域への資金供給を加速させる狙いがあります。
今年3月に策定した「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する基本的指針」では、インパクト投資とスタートアップ投資との親和性の高さを示唆する記載が盛り込まれました。インパクトフォーラムでの村井氏と神田氏の発言からは、インパクト投資拡大をスタートアップ支援に結びつけようとする政権のスタンスが窺えます。
投資を受ける事業者側の立場でコンソーシアムに参画しているインパクトスタートアップ協会代表理事の米良はるか氏は「日本で社会課題に取り組む民間プレーヤーを育てていき、同じような状況になっていく世界の各国に対し、しっかり解決策を提示していくことが日本の勝ち筋ではないか」と話し、金融業界を含め広く協力を呼びかけました。
また、フォーラムに先立って同日、インパクトコンソーシアム第1回総会が開かれ、水口剛・高崎経済大学長がコンソーシアム会長に正式就任しました。水口氏は、金融庁設置のサステナブルファイナンス有識者会議の座長も務めています。