父の厳しい倹約に耐えてきた母

春枝の夫、つまり祐子の父親である雅彦は真面目で働き者だったが、お金の使い方にとても厳しい人だった。無駄遣いを嫌い、まだ使えるものがあれば新しいものを決して買おうとはしない。

もちろんそれは春枝に対しても同じ。春枝が新しい洋服を欲しがってもまだ着られる服があれば許可は出ず、友人から旅行に誘われてももったいないと反対されて行けなかった。

過剰な倹約のおかげもあって祐子は大学卒業まで何の不自由なく過ごすことができたのだと分かっている。しかし春枝がおしゃれや旅行を楽しみたいと思っていたことも知っていた。だから祐子にはずっとぜいたくをすることへの罪悪感があった。

そんな状況が変わったのは4年前、雅彦が亡くなったことがきっかけだった。

落ち込んでいる春枝を元気づけるため、祐子は父が遺したお金を使って旅行に連れて行ったり、買い物をしたりするようになった。最初は買い物にも遠慮がちだった春枝だが、元気を取り戻すにつれて自分のためにお金を使うことも楽しむようになっていった。今となっては特にファッションは春枝の人生に欠かせない趣味になっている。

祐子は運転しながらちらりと隣の春枝を見た。春枝は窓の外に目を向けながら鼻歌を歌っていた。