悪い口コミから膨らむ進学への不安
「じゃあ、またあとで」
「うん、お迎えのときに」
午後、悠真が幼稚園から帰り、ようやく家事が一段落したところで、ひかりはリビングでパソコンを開いた。まず検索したのは、地元の公立中学校の評判だった。否定的な口コミばかりが目につき、ひかりは読んでいるうちに心配になってきた。
「知らなかった……」
続いて、ママ友たちの話を頼りに、自宅から通える私立小学校をいくつか調べてみた。学校のホームページには、少人数教育や多彩な課外活動、充実した施設が紹介されている。系列中学校への内部進学制度もあり、将来の中学受験の負担を減らせる点も魅力的に思えた。
「ママ、何見てるの?」
明るい教室の写真を眺めていると、隣から声がした。
「小学校のホームページよ。悠真も、もう少ししたら小学生になるんだよ」
「僕、ランドセルは青がいい!」
「ふふ、もう決めてるの?」
「うん! だって、ブルーが一番最強でかっこいいから!」
お気に入りの戦隊ヒーローについて嬉しそうに話す悠真を見て、ひかりも思わず笑顔になった。この子には、できるだけよい環境で学校生活を送ってほしい。
「あっ! ママ、テレビつけて! 始まっちゃう!」
「はいはい、ちゃんと座って見てね」
「早く早く!」
こちらのことなど眼中にない様子で真剣にテレビを見始めた悠真に苦笑しつつ、ひかりは再びパソコン画面に目を向ける。
しばらくして見つけた小学校受験塾のページには、体験授業の案内が表示されていた。
工作やゲームを交えた内容で、年少児から参加できるという。ひかりはソファの上で飛び跳ねている悠真を時折注意しながら、申し込みフォームに必要事項を入力し、送信ボタンを押した。
初めての受験塾を楽しむ悠真
幼稚園の降園後、ひかりは悠真を連れて小学校受験塾の体験授業へ向かった。教室には同じ年の子どもたちが10人ほど集まっている。
「ママ……」
「大丈夫。ママ後ろで見てるからね」
授業では、色紙を使った工作や、絵カードを使ったゲーム形式の課題が行われた。初めての場所に緊張していた悠真も、すぐに楽しそうに取り組み始めた。授業後には講師が声をかけてくれた。
「悠真くん、積極的に参加してくれていましたね。工作も最後まで集中して頑張っていましたよ」
「ありがとうございます」
ひかりは、思わず頬を緩めた。親の欲目かもしれないが、確かに周りの子たちと比べても、積極性や集中力があるように感じられた。悠真には、こういった受験課題が向いているのかもしれない。
帰り道、悠真は工作で作った紙の動物を嬉しそうに見せてきた。
「ママ、見て! これ、僕が作ったんだよ!」
「上手にできたね。今日のお勉強、楽しかった?」
「うん! ゲームも面白かった!」
「そっか。また行ってみたい?」
「行きたい!」
元気な返事に、ひかりの期待はますます膨らんだ。悠真もこんなに楽しんでいるのだから、受験を前向きに考えてもよさそうだ。
