秋晴れの朝、ひかりは年中の息子・悠真を幼稚園へ送り届けたあと、仲のよいママ友3人と近くのカフェに立ち寄った。
席に着くなり、先日行われた学芸会の話が始まった。衣装制作の苦労や写真撮影が下手な夫への不満、誰を招待するかで義母と揉めたこと。それぞれが愚痴を吐き出し、しばらくみんなで笑い合ったあと、1人のママ友が話題を変えた。
初めて意識した息子の小学校受験
「そういえば、来月から塾のクラスを増やすことにしたのよ」
「あ、そうなの? うちもこの前、志望校の説明会に行ってきたわ。そろそろ本格的に準備しないとね」
ひかりは驚いて顔を上げた。
「みんな、小学校受験を考えてるの?」
「一応ね。準備するなら、早いうちがいいから」
ひかりは思わず感心した。地元の公立小学校へ進むものだと思っていたため、悠真の受験については具体的に考えたことがなかった。
「それに、うちの学区の中学校って、あんまり評判がよくないらしいのよ」
「えっ、そうなの?」
「私も知り合いから、相当荒れてるって聞いたわ。トイレにたばこの吸殻が落ちてたとか」
「そうそう、集団で万引きして捕まった子もいるんだって。だから、小学校から私立に入れちゃうのもありかなって」
その後もママ友たちは、塾や志望校について話していた。ひかりも相づちを打ってはいたが、知らない単語が出てくるたびに落ち着かない気分になった。みんな、いつの間に調べていたのだろう。
