まとまった額の遺産を相続すると、「減らしたくないからとりあえず預金しておこう」と考える人も少なくない。

もちろん、近いうちに使うお金まで無理に資産運用の対象とする必要はないのだが、遺産を長期間現金で持ち続けることにも別のリスクがある。だが、そのことに気づいている人はまだ少ないようだ。

今回は、遺産を1000万円相続した友人兄弟の事例を紹介する。

「現金1000万円」を相続した兄弟

兄・丈雄さんと弟・寛人さんの兄弟は2018年頃、母の死によって、現金1000万円ずつをそれぞれ相続した。私は丈雄さんとはかねてから親交があったが、丈雄さんから話を聞いたところ、当初、この1000万円を使う予定はなく、自分と妻の老後のために取っておくつもりだったという。

世間的には投資熱が高まっていた時期ではあったが、「株は怖い」「投資信託もよく分からない」という気持ちや「せっかく親が残してくれたお金なのだから、減らさず銀行に置いておけばいい」といった気持ちから投資には回さなかったのだ。

一方、お金があるのに使わずに置いておくのも簡単ではない。

子どもの進学、大型の家具家電の買い替えや、突発的な病気やけがによる医療費など、まとまったお金が必要なタイミングはたくさんある。

丈雄さんとしては「1000万円もある」という安心感もあったのだろう。当初の「取っておく」という予定はどこへややら、何かしら理由を付けて少しずつ取り崩しているうちに、残高はみるみる減っていった。気づけば手元に残った相続財産はわずか200万円足らずとなったという。

話を聞いたとき、丈雄は私に「まとまった額の遺産が入ることは平時ではありえない。」「だからこそ、平時とは違う視点で資産運用についても考えるべきだった」とも語っている。

日本人らしく堅実だった丈雄さん故の後悔とも言える。