相続でもめないために、親が元気なうちから兄弟姉妹で話し合っておく場合もある。そのこと自体は決して悪いことではないが、話し合いを終えたからといって「もう遺産分割は終わった」と考えるのは危険である。

今回は、父が亡くなる前に3兄弟で遺産分割の話し合いを終えていたにもかかわらず、死後にその合意が崩れてしまった事例を紹介する。

「父がまだ生きているうちから」話し合いをはじめた

長男・常忠さん、次男・之博さん、3男・遥祐さんの3兄弟は、父の残した遺産の相続をめぐって将来争いが起きないよう「父がまだ生きているうちから」話し合いをはじめた。

その内容は、父が亡くなったら、常忠さんと之博さんが遺産を半分ずつ相続する。そして遥祐さんだけは一切財産を相続しないというものだった。

一見すると、不公平に見える。だがしかし、その結論に落ち着いたのには理由があった。

常忠さんは体の弱い子どもを抱えており将来の医療費や生活費に不安があった。
また、之博さんはパートタイム労働で生計を立てており、収入が不安定。
一方、遥祐さんは自営業を営み、遺産分割協議を行った当時は、兄弟の中でもっとも経済的に余裕があった。

そういった背景もあり、遥祐さんも「自分は大丈夫だから常忠と之博で分ければいい」と納得して合意していた。
「父の相続で兄弟が争う必要はないな」常忠さんが言い、之博さんも「すでに話はついたしな、これで安心だろう」と、安堵の思いを口にしていた。

しかし、この後、常忠さんも之博さんも、相続に潜む魔物に足元をすくわれることになる。