サツマイモ掘りを提案したのは誰
宙人は少し迷ってから、ぽつぽつと話し始めた。
あの日、サツマイモ掘りへ行こうと言い出したのは知子だった。家で本を読んで過ごしていたときに誘われ、宙人も面白そうだと思って「やってみたい」と答えた。それで2人で近所の農園まで出かけたのだという。
「おばあちゃんが先に誘ったの? 宙人が何度も行きたいって言ったんじゃないのね?」
「うん。ぼく、言ってない」
病院で聞いた話とは違う。恵理の胸がざわつくのを感じた。
「……それで、畑に行ったあとはどうしたの?」
「えっと、帽子のおじさんがいて……」
「農園の人?」
「たぶん。そのおじさんに掘り方を教えてもらって、ぼくがやってたの。そしたら、おばあちゃんが『おばあちゃんがやってあげる』って来て……」
宙人はそこで少し考えてから言った。
「それで、おばあちゃんがお芋掘ろうとして転んだ」
恵理は言葉を失った。宙人が駄々をこねて無理に芋掘りをやらせたわけではない。むしろ積極的だったのは知子のほうだ。
「どうして、あのとき違うって言わなかったの?」
「だって……おばあちゃん、すごく怒ってたから。ぼくのせいだって……」
病院でのことを思い出したのか、宙人はうつむいた。
「言っても、ウソって思われるかもって思った」
恵理は、はっとした。
恵理は、知子の言葉だけで事の経緯を分かった気になり、まともに宙人の話を聞かなかった。そのせいで、まだ6歳の息子は1人で何日も悩むことになったのだ。
「宙人、ごめんね。ママ、もっとちゃんと話を聞けばよかった」
「ううん……」
「話してくれてありがとうね」
宙人を抱きしめ、頭をなでてから、恵理は立ち上がる。
知子と話をしなければ。
恵理は、知子のために用意した袋が並ぶ玄関へと向かった。
