<前編のあらすじ>

運動嫌いだった清志が、息子・悠真の幼稚園の運動会に向けてジムへ入会。前年の保護者リレーで転倒したことを気にしており、今年こそ格好いい姿を見せたいとシューズやウェアまで買いそろえた。

清志は仕事帰りにジムへ通い、休日にはランニングも始める。悠真も父を応援し、妻・陽子も出費は気になりながら運動すること自体は歓迎していた。

しかし約1週間後にはジムへ行く回数が減り、運動会が迫っても家でゲームをする清志に、陽子はジムの解約を求める。悠真の期待を裏切らないでほしいと訴える陽子に対し、清志は「俺は俺なりにちゃんとやってる」と言い残してジムへ向かった。

●前編【「実はジムに入会したんだ」運動会に向けてやる気になった夫…妻が突然“解約”を迫ったワケ】

期待に胸を膨らませる悠真

運動会当日。

陽子はいつもよりも早く起きると、キッチンで朝食の準備を始めた。テーブルの上には忘れ物がないようにと昨晩のうちに水筒やタオル、日焼け止めなどを置いていた。朝食と同時並行にお弁当作りをしていると、後ろから悠真が声をかけてきた。

「ママ! これでいい?」

振り返ると、悠真は体操服姿で立っていた。いつも登園の準備が遅い悠真だが、今日は張り切って自分で着替えまで済ませていた。

「うん、似合ってるよ。かっこいいわ」

「今日、かけっこがあるから。俺、絶対に1番になるから!」

昨年は1番になれず悔しい思いがあったのだろう。運動会が近くなるたびにこの宣言を繰り返していた。

「ふふ、頑張ってね。それじゃあパパを起こしてきてもらっていい? パパが寝坊しちゃうから」

悠真は陽子の話を聞き、一目散に寝室に向かっていった。それからすぐに、眠そうに目をこすった清志がリビングに入ってきた。

「おはよう」

陽子はあいさつだけを済ませてすぐに料理を再開させた。

「ああ、おはよう……」

少し気まずい間があったが、すぐに悠真が間に入ってきた。

「ねえ、パパ! 今日、俺、かけっこで1番になるからね」

「そうだな。頑張れよ」

「パパもリレー走るんだよね⁉」

悠真の質問に清志は軽くうなずいた。

「もちろんだ。ちゃんと見ておいてくれよ」

「1番だよ! 絶対に1番になってね!」

「あ、ああ。分かってるよ」

清志は言葉に詰まりながらも何とか返事をして、洗面台に顔を洗いに向かった。

悠真があまりにも期待しているので、陽子は昨年の運動会で清志が派手に転んだことを思い出した。今年も同じようなことにならなければいいけど、と少し心配になった。