「うちは私立中学へ行くような家ではないよ」
佳子さん夫妻は、もともと教育熱心な家庭というわけではありませんでした。夫婦ともに公立中学、公立高校を経て大学へ進学。娘にも、地元の公立中学へ進み、高校受験をしてもらうつもりだったといいます。
毎月の家計簿を細かくつけたことはなく、給料が入れば住宅ローンや生活費を払い、余った分を貯金する。外食や旅行も、贅沢はしないもののボーナスが出ると楽しんでいたといいます。
転機は、娘が小学3年生の冬。仲のよい友達の多くが中学受験塾へ入ると聞き、「私も受験してみたい」と言い出したのです。
最初、佳子さんは驚きました。
「うちは私立中学へ行くような家ではないよ。勉強もすごくハードだって聞くし……」
思わずそう答えたといいます。しかし娘は、学校のテストではいつも満点を取るタイプでした。自分は比較的勉強が得意だという自覚があり、みんなが塾に行って難しいことを勉強するなら自分もやってみたい、と自然に考えた様子でした。
子どもが自分からやりたいと言ったことを、お金を理由に諦めさせてよいのだろうか――夫婦はそこで初めて中学受験について話し合いました。
調べてみれば、大手塾へ3年間通うだけでも200万~300万円ほどかかります。私立中学へ進学すれば、その後6年間の学費も必要です。世帯年収700万円で、本当に払えるのか……?
シミュレーションした一郎さんは慎重でしたが、最後にはこう言ったそうです。
「子どもはひとりだから、家族3人で頑張れば何とかなるかもしれない。やるなら、途中でお金が足りないからやめることだけは避けよう」
この日から、佳子さん一家は初めて本気で家計と向き合うことになりました。