若い部下との会話に違和感
ゴールデンウィークが明けたころ、和司は部下の定岡を連れて取引先を回っていた。
定岡はこの春から中途採用で入ってきた社員だ。年齢は26歳で前職は求人広告の会社で営業をやっていたということくらいしか和司は知らなかった。入ってきたばかりということで和司が一緒に営業を回り、既存顧客への挨拶や仕事の流れを教えている最中だった。
1件目の訪問を終え、次の取引先に向かう前に2人はコンビニの駐車場に車を止めてそこで軽い休憩を取った。定岡は普段はヘラヘラしていて頼りなさそうな感じだったが、今朝はその顔が曇っていた。顧客の前ではちゃんと笑顔で対応をしているが、それ以外になるとずっと暗い顔をしていた。
昔ならケツを蹴とばして元気を出させたものだが、今はこういうケアも上司の仕事だ。
「何かあったのか? 落ち込んでるように見えるぞ」
缶コーヒーを一口飲んで和司は定岡に声をかけた。定岡はため息をついた。
「そりゃそうですよ。ゴールデンウィークが終わって次の祝日は7月20日の海の日までないんですよ。こっから2カ月以上、働きっぱなしってことじゃないですか。それを考えたら暗くもなりますって……」
「は?」
自分のようにすべてを仕事に捧げるという考え方が今の時代とズレているというのは何となく理解していた。社内でも自分のような考え方をしている人間はほとんどおらず、話が合わないなと思うことは多々あった。
それでも祝日がないからと言って落胆するような人間には今まで出会ったことがない。しかも上司に対して平気でそんなことが言えるなんて和司の中では考えられないことだった。
「そんなに休みがほしいのか?」
思わず和司は質問をしていた。定岡は当然だという表情でうなずいた。
「やりたいことがたくさんありますからね。休みがないとできませんから」
定岡の答えに和司は何も答えなかった。こんな人間にうちの仕事が勤まるのかどうかと不安に思った。
