<前編のあらすじ>
年始の帰省から戻った夜、律子は息子・航大と娘・怜美のバッグから、義母・義美が渡した白い封筒を見つける。中には、多額の現金が入っていたうえ、「お母さんには内緒よ」と言われていたことも分かり、律子は強い危機感を抱く。
律子は電話で義美に、今後は渡す前に一言ほしいこと、親に分かる形にしてほしいことを伝えるが、義美は「厳しすぎる」と受け流し、まともに聞き入れようとしない。
その後、律子は夫にも相談するが、「もらえるものはもらっておけばいい」と軽く流されてしまう。義美にも夫にも危機感が伝わらない中、律子はせめて航大と怜美には、自分の言葉でお金の扱いについてしっかり伝えようと決める。
●前編【「お母さんには内緒よ」子どもに“秘密のお小遣い”を渡す迷惑な義母…母が抱いた「消えない不安」の正体】
子どもたちに伝えたいこと
昼下がり、律子はリビングのテーブルを片づけ、航大と怜美を呼んだ。
「この前のお小遣いのことで、もう一度話したいの」
航大はすぐに眉を寄せた。
「またその話?」
「お小遣い取り上げたんだから、もういいじゃん」
非難がましいその言葉に胸が痛んだ。そう受け取られていることは分かっていた。
「前も言ったでしょ。別に取り上げたわけじゃない。あのお金は、航大と怜美それぞれの口座に入れたよ。お母さんのお金にはしていないし、あなたたちのために取ってある」
怜美がクッションを抱え直した。
「じゃあ、怜美のお金は残ってるの?」
「そう。だからこそ、どう使うかはちゃんと考えてほしいの」
航大はまだ納得していない顔だった。
「でもさ、ばあちゃんが俺らにくれたんだから、自分で使ってもよくない?」
「気持ちは分かるよ。欲しいものたくさんあるだろうし、すぐ使いたくなるよね」
律子は呼吸を整えてから、2人の顔を見た。義美への苛立ちを混ぜてしまえば、話がぶれてしまう。
「でもね、あんまり大きな金額を持っていると、なくしたり、勢いで使いすぎたり、人に羨ましがられて嫌な思いをしたりすることもあるの。航大も怜美も、まだお金の管理を覚えている途中でしょう」
怜美は少し不安そうに、こちらを見た。
「大人になるまで使っちゃだめってこと?」
「そうじゃないよ。使い道もタイミングも、2人の気持ちを大事にしたい。何が欲しいのか、どのくらい残しておくのか、一緒に考えたいの」
航大はスマホを伏せた。
「俺が欲しいもの言ったら、ちゃんと買わせてくれる?」
「航大が本当に欲しいものならね。でも、そのときはお母さんの意見も聞いて欲しい。必要かどうか、よく考えたほうがいいものもあると思うから」
怜美が小さく口を開いた。
「じゃあ、今度欲しいものがあったら、お母さんに言えばいい?」
「うん。お金をもらったときも、使いたいときも、まずはお母さんに言ってほしい。お金を使わせたくないわけじゃなくて、使い方を一緒に考えるために」
航大はしばらく黙っていたが、やがて呟いた。
「……まあ、それならいいけど」
怜美も兄に続いて「分かった」とうなずいた。どこまで理解してくれたのかは分からないが、律子は一旦息をついた。
