ゴールデンウィークに入り、テレビでは各地の行楽情報が盛んに扱われるようになっていた。そんなBGM代わりのテレビを聞き流しながら、楓はリビングを掃除していた手を止め、時計を確認した。

以前のゴールデンウィークなら、夫の裕太と一緒に旅行に行ったりしていただろう。しかし昨年の6月に璃空が生まれた今、そういうわけにもいかなかった。

「今年は家でのんびりしようか」

どちらからともなく夫婦のあいだで出た提案通り、今年は家でゆっくり過ごすことになったはずだった。

ところが、連休の直前になって義実家から連絡があり、孫の顔を見るためにうちまでやってくることになってしまった。

楓は何かと細かいわりに、まわりくどい言い回しで小言を言ってくる義母・真理子のことがあまり得意ではなかった。というかかなり猛烈に嫌いだった。今こうして熱心に掃除しているのもそのためだった。もし埃でも残っていようものなら、璃空の発育に影響があるかもしれないとかなんとか、目玉を三角形に尖らせながら必ず小言を言ってくるに違いない。

歓迎できない義母の来訪

予定していた時間よりも30分ほど早くやってきた真理子たちを、楓は迎え入れた。マンションのインターフォンが鳴るや、エントランスまで迎えに下りる。決して歓迎しているわけではなくとも、丁寧に出迎えることで多少でも気をよくしてくれれば儲けものだ。

「久しぶりね。しばらくお世話になるわよ」

「お久しぶりです。お疲れでしょうからどうぞ中に入ってください」

そう言うと真理子はすぐにリビングに入っていった。靴くらい揃えろや、と心の中で毒づいていると真理子の後ろに立っていた義父の良太郎と目が合った。

「お義父さん、1つ持ちますよ」

「ああいや、いいんだよ。大丈夫だから」

2つの大きなカバンを持っていた良太郎は、にこりと笑って首を横に振った。真理子のことは苦手だが、義父の良太郎は穏やかかつ優しい人だ。

2人のあとに続いてリビングへ向かった楓は、お茶の準備にとりかかろうとした。しかしキッチンに立った瞬間、真理子の声が楓へと向けられた。

「ねえ、あれは何かしら?」

真理子はテレビボードの横に置かれた兜飾りを指さしていた。

「何って、兜飾りですよ」

飾ってある兜飾りはキャラクターもので、いわゆる兜飾りに見られるような重く威厳のある佇まいではなく、軽い素材で作られ、ややデフォルメされた丸みのある形とパステルトーンのカラーリングがかわいらしいものだった。値段やインテリアとの馴染みまで含めて楓たちが選んだものだったが、真理子は小さく鼻で笑った。

「やっぱりね。私が思ってた通りだったわ」

「……どういう意味ですか?」